2008年01月15日

政治家に夢があるか

鈴木宗男の側で逮捕され、東京拘置所に512日間勾留されその後『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』を書いた佐藤優氏(以下敬称略)が昨年末、ほぼ同時に出版した『国家論』(NHKブックス)『私のマルクス』(文芸春秋)と『インテリジェンス人間論』(新潮社)3冊を買って年末年始で読んでみようと思いました。

最初に『国家論』を読んでみたのですが、途中(約100頁)で訳が分からなくなり、最初に戻り数回繰り返しました。しかし、何度読んでも良く解らないところが多いので、矛先を変え次の『私のマルクス』を読み始めました。内容は佐藤が浦和高校から同志社大学神学部に進学し、修士課程を終えたところまでの佐藤の思想遍歴を綴っています。

その内容たるや僕の整理できる所ではありません。参考文献などもとんでもない数です。なんとか(理解していないという事)、『私のマルクス』に目を通し、自分なりに、極めて乱暴に言えば、「人間のもとめる理想郷、ユートピアに我々人間はどうすれば近づけるか、2千年の歴史を有する神学を基礎にこれまでの思想家を研究し、現実世界に対する処方箋を出す」のかと考えました。

そこで、『国家論』の最後(終章「社会を強化する」)を見ると「国家を国家の論理では規制できない(伊藤注:自らの内部からの変革はできない)ので、国家にとって外部である社会(伊藤注:国家と社会は、分離はできないが、別のもの)の力によって規制し、それによって強い社会と強い国家を作り出していうというのが、私の考える処方箋です。」と書いてあり、今乱暴に言った『処方箋をだす』という私の理解もあながち的外れでないと多少安心しています。

宗教家の求める『理想郷』も科学的社会主義者と言われる人々の主張する『共産主義社会』も共に人間が永久に追い求める理想郷であるということは、宗教家も共産主義者も共に「宗教を信じている」と言えなくもないでしょう。

その様な観点で佐藤は「今から150年後、22世紀の半ばくらいの百科事典で『マルクス主義』という項目を引いてみると、『19世紀から20世紀において影響力をもった、ユダヤ教の一分派』というように出ているかもしれない。それぐらい、マルクスに与えているユダヤ教の影響はおおきいと私は見ている。」(国家論33頁)と書いています。

繰り返しとなりますが、いわゆる無神論と考えられている左派も要するに「宗教ではないか」と言うとしかられそうですが、人間が永遠に追い求めて行かなければならないものについて佐藤は『究極的なものは神にとても近いところにあります。あるいは、神と一体となっているかもしれません。愛、平和などが究極的なものです。』(同308頁)述べています。

そして、『国家、社会、家族、会社こういったものはすべて究極以前のものです。人間かいかに真摯に愛を原理とする平和世界を作ろうとしても、それは実現できないでしょう。そのため・・絶望・・か・・冷笑主義に陥って』しまうが、『人間が究極に至るためには、究極以前のもの(伊藤注:国家、社会など)を通じるしか道がない。ただし、究極以前のものが支配する領域で、努力を積み重ねたからといって、究極的なものに移行できるわけでもありません。』

とのべ、社会が国家に包摂(伊藤注:重なり合う)されてしまうときに出てくる地獄絵(伊藤注:戦前の軍国主義)にならないためには社会を強化しなければならない、また『産業社会の段階では、社会は資本主義と相性がいいのです。そのため、社会を放置しておくと、必然的にとんでもない格差がでてくる。』とのべ、国家とは別物であるが切り離す事ができない社会の強化が必要であると述べています。

最後に社会を強化するには『人間がお互いに尊敬しあい、協力し合うことによって実現されます。新自由主義の結果、一人ひとりがバラバラにされ、・・ている現状を、根本的にたて直』す必要がある。この不可能な事を可能にするには『大きな夢』をもつ事が必要である。『内閣総理大臣になりたいなどの夢はスケールが小さすぎます。貧困が全く存在しない社会、絶対に戦争がない世界』これが『究極的なものです。』

『このような夢のシナリオを書く仕事が有識者に課され、・・それを実現するのが政治家の仕事である。この様な大きな夢を持っている政治家や官僚は現実政治において無理をしません。・・国家と社会の双方にわたる、いわば蝶番の役割を果たしているのが政治家です。この政治家たちが究極以前の世界の争いごとにしか関心をもたず、究極的なものに思いが至らなくなっていることに最大の問題がある。・・日本の政治家に究極的なものを感じる能力を回復させるのです。政治家に大きな夢をもたせるようにわれわれ社会の側から働きかけていく、これが現下の閉塞状況から日本の国家と社会を脱出させるための出発点だと思うのです。』(310頁)とのべ、今のわが国の政治全体に対する提言を纏めています。

しかし、これほどの鬼才に惚れ込まれた、鈴木宗男もたいした男じゃないですか。
posted by やすかね at 17:25| 千葉 ☀| 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする