2008年01月07日

台湾:雑感

以下は、市原市で発行されている地元政治経済紙政経ジャーナル新年号に寄稿した「雑感」です。

この話のネタは、昨年秋、千葉市内で一流ホテルの中国料理に負けない味でしかも料金は格安の中国料理店(県庁、裁判所、検察庁など人気)を経営する陳さん(彼は、旧日本軍士官学校に飛び級で進学し、多数の日本人友人をもち、戦後在日台湾人の代表として李登輝総統からもご招待を受けたこともあります。)のご案内で、友人等と台北を訪問した際の感想です。

「雑感」では、紙面の都合上省きましたが、この話の前提問題として2.28事件が引き起こされる台湾情勢について放送大学のテキストをもとに若干の予備知識を付け加えます。

1945年8月15日、日本は連合軍に降伏して終戦を迎えたのですが、ご承知のように沖縄は悲惨な地上戦となったものの、連合軍は前々から日本領として統治されていた台湾を迂回したことから台湾は悲惨な破壊から免れることができました。

日本の無条件降伏から台湾住民は「敗戦国民」から「戦勝国民」へと変身し、「光復」(祖国復帰)を歓迎しました。台湾住民は日本の統治から自らが主人公となるチャンスを迎えたのですが、10月25日台湾行政長官公署が成立し、陳儀行政長官が日本軍の投降を受け入れ、これと前後して国府軍部隊が台湾に上陸したところ、規律正しい日本軍を見慣れた台湾住民は、国府軍の「だらしなさ」に目を疑ったようです。

国府軍の精鋭は中国共産党対策に充てられ、台湾には二流の部隊が配置されたのだそうです。

台湾在住の日本人が、段階的に台湾を離れたことから生じた権力の空白を台湾で生まれ育った台湾人でなく、台湾以外の外省人が埋めたことから、台湾で生まれ育った本省人は台湾の主人公になり損なったのです。

日清戦争で中国から日本に割譲された台湾は、50年を経過して清朝から中華民国に替わった「中国」に組み込まれる事となり、ここから台湾の不幸な歴史が再開されたのです。

結局、台湾人にとってみれば、植民地支配者が日本人から、大陸から来た外省人に替わっただけでなく、彼らは、50年間の日本支配から日本人として育てられてきた台湾人の信条に配慮することなく強権的支配を行なったのです。

また、経済面に触れますと、日本人は50年間、台湾の政治経済を牛耳っていたと思うのですが、日本の敗戦で日本人が台湾を去ることになり、日本人が台湾に残した資産は、台湾での経済活動で残されたものなら、本来台湾人に引き渡されるべきところ、これら資産の接収過程から本省人は排除されたのです。

日本人の残した財産を外省人が「接収」したのでしょうが、台湾人はこれを「劫収」(接収と発音が同じで、盗み取る意味)とまで言っていたそうです。さらに大陸から腐敗の陋習が持ち込まれ、台湾の治安は瞬く間に悪化してしまいました。

鬱積した不満が些細なヤミ金煙草事件をきっかけにして外省人の政府による弾圧・粛清が始まったのです。しかし、この事件の報道は一切されず、この事件が公にされるまで台湾人はさらに50年口を噤んでいなければならなかったのです。

日本統治時代50年間に「日本人として育った」台湾人は、大陸から来た外省人の統治に対し、歓迎から怒りに変わり、そんな中での2.28事件だったと思います。(松田康博:「現代東アジアの政治」放送大学テキスト参照)詳しくはテキスト(2,800円)をご参照ください。

『昨秋、台湾出身の旧日本軍人のご案内で台北を訪問しました。老師は、私達に「台北二二八記念館」を案内したかったようです。

これは、国民党政権下(陳儀の統治下)で語ることができなかった人民虐殺事件を台湾現代史に残そうとして、後の民新党総裁(当時市長の陳水扁)が一九九七年に開設したようです。

事件は一九四七年二月二八日、闇タバコの販売をめぐる市民と警察間のトラブルから、全国的な暴動となり、その鎮圧から始まった国民党政権による住民虐殺事件です。

行方不明になった人の捜索を時の高裁裁判官が当局に申し入れたところ、この裁判官も行方不明となったような事件です。

ところで、台北で驚いたのは道路の広さですね。これは北京、ソウルでも同じで強大な権力国家の象徴ですので、日本と同じになりませんが、それにしても日本では首都圏を取り巻く道路でも中々整備がすすみません。

住民の権利重視か、権利の濫用がまかり通っているのか分かりませんが、民主主義社会では個人の犠牲でなく、正当な補償をする中で社会公共の利益を大切にする「公共心」なくしては社会も個人も成長できないと感じ、これからは政治もマスコミも社会をリードできる意識と能力が絶対必要と感じた台湾訪問でした。

またこれまで中国・韓国・ベトナム・タイ・フィリピン・インドネシアなど旅行し、ものの考え方は台湾が日本に一番近いようですから、もっと深い交流が必要と思います。歯がゆい対中国外交にも有効でしょうね。』


posted by やすかね at 12:06| 千葉 ☁| 国際 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする