事案の概要
「被相続人Aは、生前、長男次男から受けた暴行及び今度逢う時はお墓の前だ、などと言われたことから、自筆証書遺言で『私が没した後は、遺産相続はしない。すべての財産は内縁のYに差し上げる』と記載した遺言書をYに預けた。」
Aの死亡後、遺言の検認手続き直後XがYに遺留分減殺請求をしたので、Yは、民法893条で「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、・・・遅滞なく・・排除を請求しなければならない。」とあることから、該当部分の遺言内容を引用し、推定相続人廃除審判申立書に、廃除を求める旨を記載し、1頁と3行で簡単な申立書を提出した。
Xの3名の代理人は、7頁の答弁書を提出し、その中で、様々な憶測事実を書くことはともかく、「なお、仮に、推定相続人の廃除に成功したとしても、被相続人には、被相続人の実兄・・がいるため、これらの者が全員相続放棄をしない限り、申立人の目論見どおりには展開しないことを、念のため、付記しておく。」とXが廃除されても、被相続人の兄弟がいるから、目論見通りにいかないよって、念のために付記する、と吹き出しそうな蛇足が付いていました。
第1順位の相続人が廃除されたら、いきなり第3順位の相続人が放棄をしなければ、目論見通りにいかないよと、念のため僕に教えたくなったのですね。しかし、これは後述のように、廃除された者に子がある場合、この子がAの代襲相続人となることを定めてある887条の存在を知らない、無知としか言いようのない、正に完成した蛇の絵に、余った時間で書いた蛇の足に外なりません。
如何にYの存在に腹が立つとしても、依頼者の代理人が、「念のため」といい条文解釈にもならない、いい加減な付記をしたのが、事務所案内で東京大学卒と紹介されているK弁護士です。お勉強のできた秀才弁護士は、実際の殴り合いの喧嘩などしていないでしょうから、文章での攻撃となると、常軌を逸しています。尤も、売られた喧嘩は必ず買う、実践もある僕は文章でも負けていませんから、勢い場外乱闘となります。
そこで、私は、ボス弁を知っていたので、892条(廃除)と887条(廃除と代襲相続人)の関係も理解できていないことは、K弁護士だけでなく、連名の答弁書を提出している3名が「弁護士としての品位を害する(懲戒理由)のでは」と心配して、答弁書の該当部分の陳述を留保させようと電話したものの、取りつく島はありませんでした。
とにかく、遺言書で廃除の意思が書かれている以上、「遅滞なく・・請求しなければならない。」(893条)とあるので、廃除申立をしたのですが、いきなりの感情的な答弁書から思わぬ場外乱闘となりました。
途中、X弁護士は「もう止めましょうよ。」と場外乱闘の停戦を呼びかけてきたのですが、相手が自分の間違いを陳謝しない以上、終戦とはなりません。予想通り、廃除申請は却下されましたが、ボス弁曰く、「つまらない事件」の顛末はどうなりますかね。もっと、丁寧に答弁して、最初から和解提案でもすれば、よかったのにね。廃除が認められても、代襲相続となることを知っている弁護士なら、常識的には話し合いを拒否できませんから。
2019年04月08日
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