2018年07月26日

民法改正と『自由と正義」

先日、民法改正について雑駁な「めも」を書いてしまったので反省しています。今日は、日弁連の機関紙『自由と正義」7月号の特集についての自分なりの「理解」を書きました。弁護士会のメーリングにも投稿しました。では、始まり始まり、【カッコ】は8月5日追加


明治29年(1896)制定された民法が、その後122年経った平成29年大きな改正となりました。刑法などが国対国民の法律であるのに対し、民法は、私たち国民の間でのルールとなります。そして今回は、債権法改正ということで弁護士会の機関紙『自由と正義』で特集が組まれています。ブログ喜怒哀楽で少々恥ずかしいメモ書きなどしなければ良かったと反省していますが、今日はこの『自由と正義』の特集の読み方を少々エラソーに「解説」します。

特集には1と2があり、2は「民法(債権法)改正と会社法・消費者関係」と題して、43期5組で、私がクラス委員をした同組の藤原総一郎が松尾博憲会員と共同執筆しています。まさに簡明な解説であり、日ごろ担当している(と思われる)会社法との関連が見事です。【ここは、藤原君をたたえながら、俺はクラス委員だったとエラソーにしました。】


通常法律の改正があると、【普通の弁護士でも、その改正の背景とかを考えるでもなく】その改正文言の検討をして、ハイ終わりとなります【その結果、司法試験に合格した後は、勉強せずに受験時代の「預金」を引き出しながら弁護士をし、既に残高ゼロになっている弁護士もいます。】が、彼らの解説は、例えば、錯誤【一般に、考え違い】に関連し、これが【取引の安全が重視される取引となる】株式の引き受けの際の錯誤無効の制限【契約取引を簡単になかったことにはできないぞ】に関係する、【個人の】代理権の濫用事例を【会社の】代表権の濫用事例【取締役が、自分の利益を図るなど】に引き直し、これは改正民法107条が適用される。【無権代理となる。例えば、代表取締役が、ハウスメーカーに住宅建設を依頼しても、これが妾宅であることをメーカーが知りえた場合、会社は住宅建設費の支払いを免れる。】

消滅時効については【これまで、消滅時効の期間が契約によっていろいろあり、医師の治療費は3年、弁護士は2年、飲み屋の付けは1年など、ややこしかったことを改正し】「時効管理を容易にする」と立法目的を簡単に説明したのち、社債の償還請求権【広く民間から資金を集める必要があるので、請求権自体は10年、利息は5年】の解説をし

【民法で5%、商法で6%の】法定利率の変更【民法3%(3年の変動制)にして、これまで交通事故の損害賠償の算定で中間利息を5%で控除するのは問題だとして引き下げたことです。】が会社法へ及ぼす影響。【取締役の報酬請求権も民法の3%となる。】

詐害行為取消権【債務者が苦しくなると債権者の債権を価値を下げる契約】の改正では、特集1でも【破産法で管財人が債権者の利益を図って取引を否定する】否認権との関係に言及しているものの(わかりやすい具体的な例が紹介されていない)、この解説では「債務超過にある会社が、残存債権者を害することを知りながら、優良資産や優良事業に関する権利義務だけを承継対象として行う詐害的会社分割に対応するため」と、自分を含め普通の弁護士には考えが及ばない論点を指摘するなど、圧巻の解説です。
その外、多数当事者の債権債務【数人が債権者・債務者の場合の法律関係、例えば、おじさんが借地の上に建物を所有したっまま亡くなり、甥姪などが相続人となったような場合】債権譲渡・債務引受・契約上の地位の移転【個人商店が株式会社になった】、委任なども整備法の解説まであります。

そこで、『自由と正義』の読み方の順序ですが、特集の1から順序良く読んでも「現行民法が債権関係の規定を中心として幅広く見直され、・・民法改正が倒産手続や倒産実体法の規律に及ぼす影響は少なくないといえる。」(11頁)との認識が示されています【第二東京弁護士会 深山雅也会員】が、申し訳ないが「総論」としては内容が希薄です。総論であるならば、なぜ民法が122年経って改正されるのか、その【明治時代に制定された民法を改正する必要が出てきた、現代の資本主義社会の発展】社会実体にいかなる変化があったのか、などからの解説がなければ「総論」とは言えないと考えます。

思うに、民法は、社会的希少資源の公正(公平ではない)な分配を可能にする法制度であり、その経済体制は、言うまでもなく、資本主義的な生産・流通・消費となっています。
要するに、企業は生産現場に資本をつぎ込み労働力を購入して、社会的需要を満たす商品を生産し、法はこの起業家に商品の所有権を認め、この商品が契約関係で最終的に消費者の手元に届き国民生活が維持されています。【労働力の商品化と資本家が自由に処分できる商品の生産・流通・処分の自由が保障されるのが資本主義社会】

しかし、明治以来100年以上経過し、社会の生産から流通さらには消費行動までもが大きく変化し、特に企業活動が複雑化【国際的な営業譲渡、合併などが増大】する一方、企業が激しく営利を追求すること、裏を返せば生き馬の目を抜くような【ブラック企業の】油断ならない契約から、社会全体で取引の安全が強く求められる時代になったということでしょうか。

そこで、民法の意思表示から始まる契約関係の法的整理が必要となったということでしょう。特に、企業活動の生産現場では資金調達、会社の合併、営業譲渡など複雑な法律関係を効率よく処理することを念頭に今回の改正が行われた、などと「空想」することが「総論」の一部になるだろうなどと考えました。

いずれにしても、今回の民法改正の概要を効率よく理解するには『自由と正義』45頁から読み始めるのが良いと思います。なお「民法改正においては、消費者概念(あるいは事業者概念)の取り込みや消費者契約についての特則を設けること、あるいは消費者契約等について・・全て見送りになっている。」(52頁)と解説されていますが、今の経済体制の中で、個別具体的な、極めて雑多な消費者契約関係を規律することは、民法という一般法では扱うべきではないということでしょうかね。【弁護士会などの消費者委員会などで、「消費者保護」の活動が盛んですが、これが行き過ぎますと消費者保護の美名のもとに、活発な企業活動の桎梏(手かせ足かせ)になっては遺憾と考えていると思います。】

繰り返しますが、『自由と正義』【弁護士でない人も自由に購読できます。】は、特集2〜特集1へと読み解いてください。特集1各論(1)詐害行為取消権と否認権などに最初から取り組むことも、自分の失敗から言えることは時間の無駄かもね。ここも企業分割、契約上の地位の譲渡などから詐害行為取消権と否認権を考える必要があります。各論(2)の債権譲渡も同じです。
posted by やすかね at 15:26| 千葉 ☀| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。