民事再生手続きは、概ね500万円の負債で100万円、3000万円の負債でも300万円程度の分割弁済で破産のように資格を要する職業の欠格事由を回避できるもので、再生計画案を作成して裁判所が認可すれば、3年程度で経済的更生ができる優れた制度です。多少、原理原則から論じますと
本来、資本主義社会は、社会の遊休資本を集め、企業に資本として貸付して利息・株式の配当を行う経済体制ですが、資本家でもない消費者に金銭を貸し付け、高利をとる「サラ金業者」(資本主義社会の毒饅頭)がはびこり、消費者被害が拡大しました。
この様な資本主義社会のアダ花から、借金返済が出来ない債務者の自殺が増大し、また自殺しないまでも自己破産事件が増大しました。
社会的対策として、利息制限法改正、弁護士からの過払い返還請求(マスコミを利用し、派手な宣伝で過払い返還請求をしている司法書士・弁護士などサラ金の死肉をあさるハイエナ業者ですかね)サラ金業者の貸付限度枠が設けられるなどして、高利貸し業者はほぼ絶滅したものの、低金利社会の中でサラ金業者と業務提携して銀行が毒饅頭に手を出しています。ギリシャ時代ブルータスも高利貸しをしていたようですが、時代が変わっても高金利は魅力的なのですね。
次に、自己破産の増大に対する法的対策として、民事再生手続きが制度化されました。破産は、借金の返済全てを免除するものですが、これでは債権者が大きな損失を受ける反面、債務者の無責任体質を助長するとも限りません。
そこで、債権者は債権の概ね2割で我慢しろ、債務者はそれだけ分割弁済して、自らの責任をとれ、というのが制度の根幹です。(住宅ローン特則はここでは論じません。)
今日の問題はここから始ります。この民事再生手続きでは、債務者の代理人となった弁護士は、債務者の負債・資産の状況などから冒頭の分割弁済の返済案を作り、裁判所がこれを認めることで、裁判所が債権者と債務者の間で法に基づき「強制的」な分割弁済案をさせることとなります。
これは、前述した自己破産手続きと比べると、若干複雑となります。特に弁護士が消費者金融などについての知識不十分な場合、再生計画案が実現できそうにない場合も出てきます。
この様な場合、裁判所はできる限り責任を取りたくありませんから、破産管財人のような、裁判所の「手先」と言っては失礼ですが、法的資格を有する弁護士に個別事件の処理をさせ、「判例」のような先例ともならず、裁判所は「よきに計らえ」で一件落着となります。
この裁判所が選任する民事再生委員となる弁護士が再生手続きに精通し、債務者の負担する費用も安ければ、債務者だけでなく裁判所も申請代理人となる弁護士も全てが万々歳となります。
そこで、民事再生法も裁判所が「裁量」で民事再生委員を選任する事を認めています。尤も、債務者の資産・負債の調査から再生計画案も申請代理人が申請の際、調査し、作成済となっていますから、全件で民事再生委員を選任する必要はありません。
東京地裁では民事再生手続き開始の当初から全件民事再生委員を選任し、費用を15万円と定めています。民事再生手続き制度開始の直後から弁護士に対する研修など信頼できる制度運用に向けた取り組みなどもあり、また事件数が多いことと、消費者問題に知識豊富な弁護士が対応するなどから、債務者に申立て代理人の費用の外に15万円の追加費用が必要ですが、利用しやすい制度となっています。
ところが、水戸地裁(支部も)では、何らの調査もないまま「全件一律に民事再生委員を選任し、費用は20万円です。」といきなり説明され、面食らってしまいました。
千葉地裁などでは民事再生委員の選任は「例外的」扱いですが、水戸地裁では法に定める「裁量」を働かせることもなく、何も調べずに「民事再生委員を選任し、費用20万円をご用意下さい。」とのことです。
僕は、20万円は借金の返済に苦労している債務者の負担となるものだし、再生計画案もきちんと履行できるものを作成しているなどと、説明する暇もなく、裁判所と入り口で喧嘩を始めてしまいました。
法治主義は、国民に義務を課し、負担を求めるには法の定めが必要であると言う初歩的な法原則ですが、水戸地裁は、正に裁量権を逸脱して全件一律に民事再生委員を選任するという「運用」を行っているのです
二割配当の事件で20万円と言うのは、100万円の債権に相当するのですが、ハッキリ言ってたいした仕事をする必要もないのに民事再生委員を選任するのは明らかな違法行為ですかね。プンプン。
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