この法律は、通常男性からの暴力を想定していますが、弁護士になりたてのころ、女性の代理人となって、男性側に慰謝料を支払った珍しい事例がありました。
夫婦喧嘩の末、女性が家を出たのですが、証拠の写真などによりますと夫の留守中、玄関の硝子戸を壊し、部屋に入って、洋服タンス・押し入・台所流し台などを全てかき回し、布団・衣類に醤油・ソースをまき散らし、最後に包丁の刃先を柱に叩きつけた「暴力行為」をした事案でした。これらの写真だけでも、切れた妻の狼藉が明らかでした。
これなど、今の法律でも女性に対して接近禁止・保護命令が出されても仕方のない事案でしょうが、最近の事例では、さしたる証拠もなく、裁判官がまともに尋問をすることもなく、夫に対して接近禁止・保護命令が出された事案がありました。その結果、夫は、妻はともかく愛児と6月以上(更新で延長)面会もできなくなってしまいした。
妻から半年以上前の暴力の主張に対し、妻の陳述書(証拠として)で、頭をひっぱたく、腕を思いっきり引っ張る、胸部を思いっきり小突等で、手首の打撲(不鮮写明な写真)、胸部を思いっきり小突から転倒して足を家具にぶつけ右膝捻挫(写真は全く不鮮明、陳述書では痣が捻挫に昇格)などで、そのほか診断書など一切ありません。夫は、最近半年は、全く手も触れていないと主張していますから、夫から見れば、妻は嘘を並べ立てていると言うこととなります。
通常、妻が、夫からいつか殺されてしまうかもしれません、などと主張する事件であるなら、その前提となる暴力から怪我が発生し、医師の診断書などは不可欠でしょうが、一年から半年以上前の不鮮明な写真と一方的な妻の言い分だけで、その後も暴力を受けているといいながら、それについての写真も診断書も一切ありません。それだけでなく、逆に最近までフミリーで楽しく飲食している写真もあります。また警察に相談したらしいのですが、その相談内容も疑わしい限りです。
しかし、妻が「これらの暴力がエスカレートすれば、何時殺されてしまうか怖い思いをしています。」と主張すれば、裁判官は、夫から満足な尋問もせず、簡単に夫に対して接近禁止の保護命令を出してしまうのです。夫とすれば法治国家とは考えられない事案です。
裁判官は、夫婦喧嘩で言い争っているときに、夫の発言だけを一方的に取りあげ、また頭をひっぱたく、胸を小突く行為がエスカレートすれば妻が殺されてしまう、などと考えたのでしょう。それが、いくらエスカレートするといっても物には限度というものがあり、殺されるなどとの主張はまともには信じられないと思います。
また、裁判官が、保護命令を出すには、DV法でその理由ないしは理由の要旨の記載を求めているのですが、裁判官の夫への質問が要領を得ないことから僕から「何時ごろのことか、喧嘩の原因は何かなど、もう少し具体的に質問してください。」と言われたことに、裁判官はきっと腹を立てたのでしょう。決定を出す際DV法で求められている必要な理由も記載しませんでした。
DV法を根拠にして決定を出している裁判官ですから、理由の記載が必要なことは理解しているはずですから、その理由を一切書いていないということは、本当に裁判官がこの決定を書いたのでしょうかね。誰かが例文をコピーして決定を書いたのではないかと疑われても反論できるのでしょうか。
抗告状で私は、「裁判官の抽象的質問に対し、もう少し具体的な質問をすべきと代理人が一言二言口を差し挟んだところ、裁判官は血相を変えて代理人の発言を制限してきた。」と書きました。年内になされるであろう、高等裁判所の判断が楽しみです。
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