2016年07月02日

イギリスのポピュリズム

5月に「反知性主義は国をも滅ぼす」と書いたのですが、6月23日のイギリスの国民投票は、イギリスのEU(1957年ローマ条約で、翌年ヨーロッパ経済共同体EECが発足、西欧の経済復興からアメリカの支配を脱した。93年EUとして政治的統合も進んだ。)からの離脱を支持しました。
民主主義社会では、国民の意思が最重要とされるのですが、そもそも「国民の意思」が真実存在するのか、大いに疑問とするところです。
私を含め、具体的に存在している一人前の大人なら、全ての人が、確固とした自己の意思を持っている、と言い切れるのでしょうか。仮に具体的人間が、自己の意思だとして、何かを決めようとすれば、その判断の前提として正しい事実の認識が必要です。
例えば、この野菜は、「日本産」と説明されているから買ったのだとしても、実は「中国産」であったなら、表示が嘘ですから、結局「買う」という判断は、間違った事実を前提として行われています。それでは、私達は、何をどこまで信じて良いのやら皆目検討がつきませんね。
つまり、私達は、ありとあらゆることについて真実を知ることもできないまま、適当なところで「手打ち」をして結論を出しながら、ソロソロと先に進み、判断が間違っていたら、それを修正しながら、また先に進んでいるのです。
人類の歴史も、この様な人間の間違いだらけの判断の結果、現在があると考えても「間違いはない。」(これは真実その通り)と考えます。
この様に考えてきますと、イギリスの全有権者に対し、EECからも50年以上経過し、経済だけでなく政治的にも密接な関係を有している現在のEUに残留か離脱などという『無謀』な選択をさせたことこそ、反知性主義的な行動となるでしょう。
我が国も、アメリカという国が「カウボーイが来て、問題となる人物を銃で撃ち殺し、その後はみんながハッピー」という文化を持ち大統領も国民を動員するには真珠湾攻撃などという口実を欲しがっていたにもかかわらず、そこに思いが至らずにアメリカを「真珠湾の軍艦を失っても何も反応しないアメリカ」(エドワード・ルトワック『チャイナ4.0』文春新書88頁)などと、アメリカを自分の都合の良いように想定して、真珠湾攻撃を決めた御前会議は大きな間違いをしたのです。
その結果300万人も殺され、日本国中が荒廃しました。原因として軍部が過剰な権限を持って、感情が知性を破壊する構造的弱点があった、そうです。(同前98頁)
アメリカも2003年「民主主義を望んでいるイラク人」を発明し、「フセインはアルカイダを支援しており、9.11に関与している。」と嘘でフセインを殺した。(ジョージブッシュの政府高官は、(戦争などできない?)規制緩和を専門とするビジネスマンであった。その結果、ブッシュは、これまた取り返しのつかない中東の混乱を招きました。(同前書)
即ち、国家の指導者は、時として知性的判断でなく、感情的に判断して取り返しのつかない大きな間違いを犯してしまうということです。
この様な、リーダーの感情的判断から国の進路が間違ってしまうことを回避する事はとても重要なことですが、そのためには、国民一人ひとりが世界の歴史を知り、正確な事実関係から適切な判断をしなければならないのですが、さて民主主義が常に正しい結論を出せるかというと、イギリスの国民投票のように大衆に迎合する政治姿勢は、危険極まりないですね。
EUから離脱すべきか否かなどという極めて重要な、国の将来だけでなく、世界中を混乱に導くような国民投票を実施した結果、約1740万人のイギリス国民が離脱支持という判断をしたことで、60億を越える世界中を混乱に陥れた原因を作ったキャメロンの責任は、切腹では足りないでしょうね。
ドイツ・フランスなどでは離脱の予備交渉をしないと明言していますが、この間にイギリスで首相が選出され、国会議員の総選挙を行って、法的拘束力のない国民投票を無視することもないではありませんかね。



posted by やすかね at 17:17| 千葉 ☁| Comment(0) | 国際 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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