中国人女性の犯した道路交通法違反事件(酒気帯び)がありました。中国吉林省出身で、来日してから17年、日本人と二度結婚して、現在は小学4年生の男の子と三人暮らしです。
当初裁判所から、「中国語」の通訳事件と報告があり、公判前に検察庁に刑事記録の閲覧に行ったところ、調書では韓国語の通訳が入っていることから、「何だ」と訝しく思いました。
この事件は、逮捕直後から依頼があり、私撰事件となっていました。そこで、まだ身柄拘束中のある日、午後5時過ぎ検察庁の担当副検事に電話するとすごい剣幕で「勤務時間後、電話しないで下さい。」ガチャンと電話を切られました。
この様な経過があったものですから、何とか副検事に仕返しをしてやりたいと思っていたところ、中国語のはずが韓国語、しかも調書の内容を見ると、中国で大学を卒業と書いてあるものの、来日時期などを比べると大学を卒業する前に来日していることが明らかな外、その他の記載にも事実誤認があったことから、「よーし、副検事に恥でもかかしてやるか。」と元気になりました。
で、被告人に学歴・吉林省の状況などを聞いたりして、通訳問題でもごちゃごちゃやっていると、思いもよらないことが判明しました。中国でも吉林省あたりは、朝鮮民族で日常会話は韓国語(朝鮮語)なんだそうで、文字もハングルということです。
若干歴史を遡れば、朝鮮民族が北に移動して、中国国籍になっているらしいのです。
担当書記官に、「中国語ではなく、韓国語ではないか」と詰問しますと、この書記官平然と「誤記です。」と報告文書を訂正しますので、「なんだよ、お前が中国語と連絡してくるから、ごちゃごちゃしたんじゃないか、それを誤記です。の一言で済ます気なのか」と思い、(ひょっとして口頭で喋ってしまったかもしれません。僕のことですから・・)「じゃあ訂正した連絡文書をもってこい」「いやぁ、もって行きません。郵送します。」などと場外乱闘が始まってしまいました。
書記官から訂正の連絡文書が届き事件は正式に「韓国語の通訳事件」になりました。
私が、国選ならともかく、私撰なら必要もない通訳費用を被告人に負担させるのはおかしいではないか」「訴訟費用負担は、裁判官が決めます。」(実は、裁判官が判決で被告人の負担とすると、国際人権B(自由権)規約14条V項f号違反となる)と電話でのやり取りと成りました。
それはともかく、通訳人の連絡先が伝えられましたので、電話をしてみると、日本人とイントネーションが若干違うので、「貴方の国籍は、どこか」と質問しますとこの通訳、差別されていると勘違いしたか、「貴方に言う必要は、ありません。」といいましたね。そこで私は「貴方の日本語の能力を確認する必要がある。」と言うと「私を選任するのは裁判官である。」(やり取りは法定でのもの)という調子で、私と通訳人の信頼関係は、全く築くことができませんでした。
その後も、書記官とのやり取りでも納得できないこともあり、この場外乱闘は当日の法廷にも持ち込まれました。
当日の開廷前811号法廷で書記官は、通訳事件とするか否か裁判官が決めます。と言いますので、「裁判官は被告人とあったこともないし、何を基準に通訳事件とするのか」と厳しく追及しますと書記官殿は全く返事もすることが出来なくなりました。(刑事裁判では、裁判が始まる前に、被告人に関する情報は、裁判所に起訴状しか届いていない。これを起訴状一本主義という。)
更に私が、通訳人に向かい「日本に来て何年ですか。」と質問すると彼女「15年です。」と応えたところ、被告人が間髪を入れず「私は、17年です。」と反応していました。
滞在期間の長短のみで日本語の能力は計れませんが、居酒屋とかキャバクラで働いている外国人は日本語が出来なくては仕事にならないから、単に日本語学校で「お勉強」している外国人より、日本語が堪能となる。それはともかく、通訳人の方が、滞在期間が短いことが判明し、通訳人に多少の焦りが見られました。
裁判官が入廷し、開口一番「本件は、中国語の通訳事件とします。」と、ほら、また中国だってさ!またまた裁判官も通訳言語を間違えてしまい、書記官から「韓国語です」と訂正され、裁判長は言い直しをしました。
「裁判長!本件では、通訳人は必要ない。大阪の高裁では、ウンウンかんぬん」と言おうとしたところ、裁判長、私の発言を無視して「本件は、通訳事件としますので、通訳人宣誓してください。」と、とにかく裁判が始まりました。
宣誓が終わり、裁判長は、被告人に向かい、「難しい言葉が出てわからないことがあったら、通訳人に聞いてください。」「貴方のお名前は、・・住所は・・職業は」と人定質問も日本語で滞りなく終了し、証拠調べ、被告人質問と手続きが進行したものの、通訳人は、全く仕事をさせてもらえず、裁判中一言も通訳することなく、裁判が終了しました。さらに、通常判決は、翌週になるのですが、今回は即日判決となり、直ちに執行猶予の判決がでました。(通訳人は、宣誓しただけで少なくとも2万円ですかね。)
思うに、この裁判官、私の好きな関西人らしく合理的精神を持っており(関東人なら、弁護人が噛み付くとプライドを傷つけられたと考え、意地になって通訳をさせる)十分日本語が通じ、通訳が必要ないと思えば、全く通訳を使わないどころか、翌週に判決では、また通訳人を呼ぶ必要があり(冒頭で本件は、通訳事件と決めている)通訳人のセンセイ(と書記官が呼ぶ)に再度の日当など約2万円の支払を回避できました。ご立派です。
これまで、私が関係したいい加減な、通訳事件は、チベット人の被告人の裁判を英語でやった(被告人はバンク(銀行)が理解できなかった)外、タガログ語のいい加減な通訳、裁判員裁判でのへたくそな英語通訳、など、通訳人は裁判所から高額の日当(時間単価で弁護士費用を上回る)、を受け取り、書記官から「先生」」呼ばわりされて、たいそう偉くなってしまい、私ら弁護人に上から目線で話をするのが、シャクの種ですね。
というわけで、通訳人の必要のない事件では、余分な通訳費用をカットして無駄な税金を使わない、特に執行猶予相当と思われる事件などでは控訴もないでしょうから、合理的判断が必要です。
本来裁判所は起訴状しか届いておりませんので、実際は、検察庁の判断でしょうかね。今回は、副検事さん、通訳人を入れてもいい加減な調書を作成し公判請求となりました。私など罰金を取ったほうが手続きも楽だし、税金のムダ(逆に収入となる)も省けると考えるのですが、公務員は通訳事件にしないで審理して、もしも、控訴などされると責任問題と考えているのでしょうかね。しかし、裁判官ほど責任を負わない職業は、外にはないですよ。いくら考えても、思いつきませんね。
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