2014年09月26日

弁護士は、片肺飛行で良いか

 弁護士の責務は、基本的人権を尊重し、社会正義を実現(弁護士法1条)することです。しかし、多くの弁護士が、司法試験勉強中に「十分理解」したはずの「罪刑法定主義」と「租税法律主義」の半分を、どこかに置き忘れているのではないかと思っています。
 大学(工学部)では、麻雀に現(パソコンならでは漢字)を抜かして当然落ちこぼれ、留年後、偶々地元市役所で新設される清掃工場のオペレーター(技師)として採用になったのですが、一念発起して司法試験を目指し、運良く司法試験に合格して修習を終え弁護士登録をしたとき考えました。
 
 普通に法学部を卒業しただけであれば、弁護士になっても理工系の知識とか医学も建築も特に専門として学んではいないわけですが、弁護士は、医療訴訟でも建築訴訟でも訴訟なら何でもできるのだから、結局、必要とあれば、如何なる分野でも勉強しなければなりませんし、またそれらを理解できる能力を持っていなければならない、と結論付けました。

 弁護士が職業としている範囲は、法律事務一般であり、国税庁に通知するだけで、税理士も職業とできることとなっています。しかし、登録直後、通知税理士をしている弁護士についての悪口なども耳にし、税理士の試験は司法試験よりランク下であるということで、多くの弁護士は税理士の仕事をしようとは考えていないのです。その様な認識からでしょうか、税理士法が出来たとき、弁護士が税理士の職務を行うには税務当局に通知することとなってしまいました。(税理士法51条)

 しかしながら、弁護士は、税務訴訟を行うことができる訳ですから、その前提となる税務申告はもとより、税理士の付属的仕事である、企業の会計帳簿の整理なども、何も税務当局に通知するまでもなく、本来できるはずなのです。しかも弁護士が通知税理士となると、税理士の監督官庁は税務当局ですから、弁護士自治の認められている弁護士が税務当局の監督下に入ることなり、これは、弁護士法の基本理念と矛盾してしまうのです。
 税理士法が制定されたとき、全国の弁護士は、この通知税理士の制度自体弁護士法と矛盾することをして、税理士法51条の制定をさせてはいけなかったのです。

 近時の弁護士増員問題なども弁護士自治をなし崩し的になくしてしまおうとする権力側の「攻勢」でないともいえないのですが、そもそも何故弁護士だけが自治権を認められているのでしょうか。
 これは、冒頭に書きましたように弁護士は国民の基本的人権を擁護するために必要だからです。憲法で基本的人権が保障されているのは、国家権力のによって基本的人権が侵害されるからです。弁護士がこの基本的人権を守ろうとしたとき、弁護士が国家権力に監督される立場であるなら弁護士は十分職責を果たすことなどできなくなってしまうからです。

 少々ややこしいですが、最近では、何でもかんでも基本的人権が侵害されたなどと言われることが多いのですが、法律上ストレートに、お隣の親父さんに基本的人権が侵害される、ということはありません。基本的人権は国民対国家の関係で、お隣同士などの私人間の権利侵害は、民法の不法行為の問題となります。この辺が曖昧ですと、弁護士に自治権など不要である、などと国家権力の「罠」にはまってしまいます。

 そして、国家権力が発動される典型的場面は、国家の刑罰権(刑罰は国家の独占)と国家の徴税権であり、この二つの権力行使には「罪刑法定主義」と「租税法律主義」の基本理念の下、国家の権力行使をチェックすることができるのです。

 ですから、弁護士が訴訟で一方の代理人となって離婚事件とか一般の民事事件などを扱っている範囲では弁護士の自治は問題外ですが、上の「罪刑法定主義」と「租税法律主義」が出てくる場面では、弁護士は国家権力から自由(自治権)でなければ、弁護士法の目的を達することが不可能となってしまいます。

 ここまで来ると、今日のブログも漸く本題に届いたのですが、そうなのです。弁護士は、罪刑法廷主義が具体的に問題となってくる刑事事件と租税法律主義の下、国家が税金を取り立てる徴税権が問題となってくるときこそ、面目躍如なのです。
 しかしながら、多くの弁護士は、職業としての税理士の仕事を下に見ておりますので、双発エンジンの半分を使っていないのです。国家権力側も、またこの点で非常に上手くやっているのです。
 全国7万人以上の税理士の内、30%を超える国税庁OBが税理士として税務署の監督の下仕事をしているのです。試験合格者は45,9%(日弁連2013・2・14文書)ですが、この試験合格組みも国税当局の監督下なのです。

 以上から、自分の顧問先に税務調査が入ったときなど、弁護士の立会が許されていないのは、基本的人権の擁護の観点から問題がある事となります。事務所でこんな話をしていましたら、『日弁連ライブ実務研修「国税通則法改正と税務調査」』の案内があり、当日になり弁護士会に連絡したところ、2千円でライブ中継を見ることができると分かり、事務所の弁護士も誘っておいて、開演数分前に弁護士講堂に到着したところ、200人程収容可能な講堂には、弁護士会の職員と当事務所の弁護士の2人だけポツンと座っていました。
 
 やっぱり、税理士の仕事についての弁護士の認識は、この程度かと、多少がっかりもしたのですが、裏を返せば、競争相手が少ないわけですから、弁護士の増員問題で若手弁護士の仕事が減っているこの時期に、税理士の仕事の重要性を力説して若手弁護士がどんどん税理士登録をすべきです。

 因みに、私は、弁護士業務の外に東京入国管理局長への届け出(二年間で一件もない)をしているのですが、この届け出自体、弁護士法と相容れないでしょうが、「うるさい弁護士」の出番を少しでも少なくしようと考えるのが「お役人」なのです。

 以上、繰り返しとなりますが、弁護士は、国家権力に対峙して国民の基本的人権を擁護するため、弁護士自治を保障されています。弁護士が権力によって監視監督されるなら国家権力の発動に対して毅然と言うべきことを言えない事は、当然だからです。しかし、税理士登録をすると税務当局の監督を受ける立場となり、これは弁護士自治と矛盾することとなります。
 
 ですから税理士法第51条(税理士業務を行う弁護士等)の規定は、削除を求めるべき(日弁連の文書受け売り)ですが、それはともかく国民の基本的人権が危険にさらされる場面となる国家権力の具体的発動、即ち、国家の刑罰権と徴税権を弁護士が「罪刑法定主義」と「租税法律主義」に基づいて制定されている具体的法令の要件事実の存在と法令の解釈適用を行いながら、国民の基本的人権を擁護することなくして、弁護士の社会的使命を果たす事は、極めて困難であることを再認識して、弁護士の職責を果たすべきと考えております。 

posted by やすかね at 16:37| 千葉 ☀| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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