現在わが国は、尖閣列島をめぐって中国と対立している「小さな問題」だけでなく、わが国がこれまで同様、豊かな社会経済生活を続けるために不可欠といえる(帝国主義的)国際的なブロック経済確立(TPP)、さらにこれと同時に日米安保条約の実効性担保のために集団的自衛権の可否という重大な決断を迫られています。
この集団的自衛権は、第二次世界大戦後、軍事力を背景にした「力の政策」により世界の安定を維持してきた超大国アメリカが、これまで同様「世界の憲兵」であり続けることが難しくなったことから、アメリカが同盟国である日本に対して「応分の負担」を求めてきたことから大きな政治問題となっているというのが事の本質ではないでしょうか。
日本とすれば、戦後の経済的発展を支えた大きな理由が、国の安全をアメリカに守ってもらった旨味を今後も続けたいというのが本音でしょうが、今の国際情勢を考えれば、今まで通り行かないことは、十分理解しています。
集団的自衛権については、NHKの政治討論で、社民党の福島瑞穂が「アメリカの戦争に対して日本の若者の血を流せということか」と詰め寄ったように、現在地球的規模での地域紛争が勃発している事実を抜きにすれば、国内の「進歩的世論」を説得するのは、相当難しい政治状況となっています。
そこで、アメリカの意に沿う解決を図るためには、わが国で集団的自衛権を認める方策を採る必要があるのですが、これには高いハードルがあります。戦力不保持と交戦権を否定する憲法第9条がそれであることは明らかです。そこで、@政府与党は、一番の近道として内閣法制局の人事権を行使して解釈改憲で集団的自衛権を認めてしまう。A次に、いきなり憲法第9条を改正するのは困難であるとの考えから、そもそも憲法改正を困難にしている憲法第96条を改正した後、憲法第9条を改正する。それに向けて選挙制度をどうするかなど、まだまだ大変です。
しかしながら、憲法を改正して集団的自衛権を法治国家として認めるのは、今の国内政治状況では極めて困難です。今中国とは、尖閣列島問題で日中間は非常に冷え込んでいます。この状況で、仮に中国が尖閣列島に軍隊(人民解放軍)などを派遣することとなれば、わが国内の世論は一気に沸騰して憲法改正にまっしぐらに進むと思われますが、中国の尖閣支配とまで行かなくとも、商船三井の賠償など、中国に投資した日系企業に対して、中国がこれまで以上強硬な姿勢をとったり、さらに韓国の従軍慰安婦問題などから、わが国のナショナリズムが刺激されるならば、憲法改正から集団的自衛権容認と一挙に進むこともそう遠くないことでしょう。
話は変わるのですが、1867年、フランス公使の提案で、徳川慶喜は王政復古後も日本の政権が徳川慶喜にあることを宣言するため英・仏・米・露・伊・欄など各国と謁見し、これに対し、新政府の西郷隆盛は、薩摩の江戸藩邸を根城にして江戸市中で破壊工作をして徳川方を挑発し、この挑発に乗った荘内藩によって薩摩藩邸が焼き討ちされたことで、戊辰戦争が始まり、最後には新政府側が官軍は錦の御旗を掲げたことで旧幕府軍は賊軍となって敗退しました。(『幕末・維新の日本史』夢文庫148頁以下)
結局、西郷の挑発に乗った幕府軍が敗れて明治政府の礎が定まったのですが、この史実から今の日・米・中の関係を俯瞰しますと、最近まで日本の実効支配が認められて、日中間での領土問題などなかった尖閣列島を民主党政権が国有化したことで中国がいきり立ち、その結果日本のナショナリズムが刺激されて、わが国が憲法改正から集団的自衛権容認と進むならば、これはアメリカの世界戦略の大成功となるのでは、ないでしょうかね。
アメリカの世界戦略は、ハワイを併合した後の、黒船の時代から太平洋を西へ西へと進んでいるのです。どうでしょう、今の世界を見る方法として?
2014年05月07日
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