2006年11月06日

疑いをかけられる弁護士

弁護士稼業も大変です。最近「法テラス」という言葉をお聞きになった方もいらっしゃるでしょうが、要するに敷居の高い弁護士でなく、もっと利用しやすい弁護士制度を築こうということでしょうね。

しかし、現実は国選弁護事件のギャラが安いので、多くの弁護士がやりたがりませんということで、私など、弁護士の義務だからと考えて千葉県で司法支援センターに登録(契約)して国選を引き受けている人には加重な負担となりつつあります。

富津警察とか、木更津での刑事事件が回ってくるので、おかしいなと思っていますと案の定、千葉県では登録している弁護士が少ないということで、今後は都内の弁護士にも事件をまわして行くそうです。

どうも千葉県弁護士会は、国のことにも限りませんが、「公的」なことに積極的に協力する弁護士が少ないようです。今後弁護士の大増員時代が来て若手弁護士の仕事がない、などということになった時、先輩弁護士の責任はどうなりますかね。

ところで、弁護士も最近はあまり信用されなくなっているようです。今日久しぶりに鑑別所に行って少年と面会しようとしたところ、若い担当者に「携帯電話をお預りします。」といわれ、鍵つきのボックスを出してきました。数年前も同じようなことを言われたのですが、その時は鍵付きのボックスなどなく、職員の言うことを軽くいなしても、すんなり面会できたのですが、今日は数年前と異なり、かなり厳しい態度です。殆どの弁護士がこれに従っているようです。

私が、「どういう根拠ですか」と聞きますと「その様に運用させていただいております。」と答えますので、「私は預けません。」と言うと、その担当者「それでは、私の一存ではできませんので、上司に伺ってきます。」と言うなり、玄関脇の喫煙所で煙草をふかしていた上司に何やら説明していました。

やおら、その上司が私のところに来てまた同じようなことを言いますので、「法的根拠はなんですか。」と伺いますと、その上司はグダグダ言わず直ぐに「上司に伺ってきます。」と玄関脇の階段を登って行ってしまいました。

「あれ?これは時間が掛かるな」と思い、待合室で今までの経過をパソコンで打ち込んでいますと10分くらい経過してから、今度はさらに年配の物腰の低い職員が私を待合室に迎えに来て、玄関脇の別室に案内されました。オヤオヤこりゃ大変と思っていると「私は、次長の〇〇です。これはお願いなのですが、携帯はお預りできませんか。」とお願いをされてしまいました。通常お願いをされれば「ハイな!」と了承するのですが、このお願いの前提には弁護士に対する不信感がありますので、簡単に引き下がるわけにはいきません。私は「弁護士に対する不信感があるから、その様なお願いはお断りします。」とキッパリといいました。

すると、次長さん「少年の前で携帯電話を使用されること自体、問題がある。」と言われますので、私は「携帯を少年に使わせるなんてことはありえないし、電話が架かってくれば部屋の外にでて話をする。警察の接見でも電話をするときは部屋の外でする。私は何時もそうしているのだ。こんな面倒くさい事(電話を預けないで頑張る事)をしなくとも、電話を渡せば5分10分の無駄な時間を使わなくても良いが、これはそういう問題ではない。面会させないというのであれば、その様な判断をしてくれて結構だ。」と強く言いました。

多少困った顔をした次長さんですが、「面会させないと言うことはありません。」とおっしゃいますので「それでは直ぐ面会の準備をしてください。」と鑑別所に来た目的を直ちに実行できるようにお願い(一応これは権利行使)しました。次長さんは、先ほど述べた僕の携帯電話の取り扱いについて言及し「その様な厳格な対応(電話があれば部屋の外ではなす)をしていただけるなら、それで結構です。」ということでとりあえず、一件落着です。面会室に入る際、運転モードにしたのは勿論です。

鑑別所での面会を終わり、今度は検察庁で刑事記録の閲覧です。被告人と打ち合わせをする前に刑事記録の閲覧(謄写)をしておく必要があるからです。以前はなかったのですが、検察庁でも玄関の外では、建物に入ってくる人に民間委託されているガードマンが一々行き先を聞いてきます。面倒ですが、これに答え(検察庁の職員ではありませんから、ここで頑張っても恐らく時間の無駄となりそう)玄関を入ると、今度は名前・行く先・時刻を書いて名札を貰います。これも以前はなかったのですが、これも庁舎管理規定などあるのでしょうね。名前を書かないで建物に入れず、証拠の事前開示がなかったからといって調書不同意などとやっても無益(こんな下らない話は同業者に話せない)ですから、本当は名前なんか書きたくないんだぁーと言うふてくされた態度で渋々名前を書いて7階に上がります。

ここでびっくりしたのですが、閲覧する机の上になんと真っ赤な大きなゴシックで「弁護人の方へ、記録の持ち出しは禁止されています。帰りには記録の冊数を捜査官室で確認してください。」と書いた紙を厚手のアクリル板に挟んで、ご丁寧にこれをテープで机に貼り付けてあります。ここは弁護人しか利用しない場所であり、その弁護士に対して「記録の持ち出しをするな」「あとで冊数を数える」などと書いてあるのです。あまりにも当たり前の事なのでびっくり仰天しました。また、テープで貼らなくともそんなアクリル板持ち去りませんよーだ。

しかし、直ぐ、さもありなんと思い出しました。少し前、都内の懲戒処分を受けたアホ弁護士のことを書きましたが、この彼が木更津支部で閲覧用に出された記録を無断で持ち出し、検察庁から「窃盗の疑い」をかけられたのです。その話を聞いたときは弁護士仲間でしばし笑い話となったのですが、いまや笑い話ではなくなってしまったのです。検察庁は、当たり前のように全ての弁護士に対して「窃盗の可能性あり」と疑いをかけてあのような注意書きを机の前に置いてあるのです。

いやはや、何ともお粗末な時代になったものですね。一人の馬鹿がいることで弁護士全体の自由が少しずつ狭くなってきています。閲覧室はもともと本物のガラス張りの部屋で隣の捜査官(検察庁職員)から、弁護士が閲覧している様子が丸見えなのですが、それでもアホナ弁護士が記録を持ち去る可能性があると考えられているのです。

(もう少し考えますと、仮にアホが記録を持ち去りますと、その弁護士は当然処分を受けるのですが、検察庁でも記録の管理が悪い、と処分を受けたりするのでしょうね、公務員はこれが怖いのです。そこで、「弁護士さんを疑っているわけではありませんが、・・」などと取り繕い、一応注意しているが、それでも記録を持ち去られれば、担当者としては、そこまでの責任は取りようがない、と上に対して抗弁ができるのです。多分この推理はピンポンでしょから、今度確かめましょうかね?)

それはともかく、今日の記録は、薄い2冊でしたが、返り際「ありがとう!2冊返すよ。」と言って帰ってきました。担当者の事務官は、「2冊返すよ」と言われたものの、何のことやらと思ったらしく、きょとんとしていました。多分、記録の取り扱いが周知徹底されていないのです。

ところで、閲覧記録は閉じ紐でしばってあり、簡単に紐が取れますので、捜査官に「枚数を数えなくても良いのか。」などと嫌味を言ってやろうかなと思いました。しかし、ひょっとすると本当にページ数など数え始めるかも分かりませんし、これ以上有名になってもしょうがありませんから、帰ることにしました。あーあーなんと余裕のない窮屈な世の中なのでしょうかね。
posted by やすかね at 19:57| 千葉 ☁| 世相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする