2012年03月22日

わが国の通訳事件の実態

最近、イギリス人女性の殺人事件で通訳人の力量が問題となりましたので、2009年12月9日のブログを若干手直しして再掲します。また通訳のことが「事件」となったのですが、その話は後日とします。

刑事事件と言うと厳格な手続きで行われるというのが常識ですが、現実の裁判では相当いい加減なのもあります。
 先月のことです。フィリピン女性の出入国違反の事件がありました。11月26日の裁判と言うことで、起訴状などが11月13日FAXされたと同時に通訳人はフィリピンに帰っており、20日にならないと帰国しないということでした。元々当番事件で、直前に入ったものですから、困ったなと思いました。
そこで20日になって事務所から通訳人の携帯に連絡(通訳人の携帯は海外でも受信できるとの注が入っていますが、国際電話の料金は当然弁護人もちです。)を入れ、21日(土)の接見をお願いしたところ、彼女、大丈夫と言うので今度は、僕の携帯から電話を入れたところ、通訳人は「いま福岡にいて・ボランティアがどうのこうの」と関係のない話をしているので「余分なことは良いですから」と遮って「21日が駄目なら、では、接見は何時出来るのですか。」と尋ねたところ、今度は25日はどうのと勝手なことを言っていました。
やむなく24日午後司法支援センターに通訳人の候補者リストを貰うことにしましたが、通訳人の普通の電話番号を見ますと都内とか埼玉などでしたので、今日の今日とかは都合が付かないであろうと思いました。
ところで、接見前の記録閲覧で、被告人は来日二回目で、今回は12年前の来日であり、仕事もスナックのホステスなどでした。
外国人でも単純労働とか3Kの仕事ですと日本語を話す機会が少ないので12年間日本で生活しても日本語は中々上達しませんが、日本人の男性客相手のホステスですと日本語が上手に出来なければ、稼ぐことも出来ません。ですから、私は被告人の日本語能力を信頼して、通訳人なしでも接見できると考えました。
県警本部に接見に言ってみますと、被告人は十分に日本語が話せ、これならフィリピンに帰国しても十分通訳としてガイドなども出来ると思いました。
通訳事件は、被告人の権利を守るため通訳人をつけるのですから、弁護人が通訳人なしで接見をするなら、通訳人がいる以上に、きちんと話が出来なければ問題となりかねませんから、私は調書に記載されていない事実関係の聴取に心がけました。
被告人の話によりますと、フィリピンに子どもがいる、子どもの父親は、被告人が妊娠6ヶ月のときピストルで撃ち殺されてしまった。彼と知り合ったのはジプニーの中であったなどなどです。
今回のパスポートに張られている写真は本人のものらしく、記載されている名前が被告人の名前と類似していることからこの点に触れると、その名前は自分の姉である(信じられませんが、検察官の調書にも記載なし)ことなどが判明しました。当然パスポートは名前が違うもののいわゆる「偽造パスポート」とは違います。(検察官はこの点についての認識がなく、また証拠もないのに法廷で「パスポートは偽造だ」と主張しましたので、私が異議を述べると撤回しました。)
公判前日、通訳人から「弁論要旨をファクスしてくれないか。」と連絡がありましたが、お断りしたところ、今度は裁判所から「通訳人に弁論要旨をファクスして頂けないか」とご連絡がありました。
私は、「言葉が適当ではないが、通訳人は嘘をつくし信用できないから他の人に代えたらどうか」と意見を言いましたが、担当書記官は『せっかく探した通訳人』と言うことで通訳人を代えることが出来ませんでした。
公判当日です。通訳人は、私の顔を見るとやけに頭を下げるのですが、私は出来る限り無視することにしました。人定質問(被告人の本人であることの確認手続き)になりました。2部S裁判官から「被告人は、〇〇と言う名前と××と言う名前の両方をつかっていたか。」との質問がありました。
被告人はタガログ語で「いいえ」と答えたらしいのですが、通訳人が「はい」と通訳したので、被告人はすぐ、私の顔を見て「違う」ことを告げました。
私が「裁判長、今通訳人はハイと答えたが、被告人は違っているといっている。」と言うとS裁判官は被告人と僕の呼吸が分からなかったらしく「弁護人の言っていることが分かりません。」と言うので私は、立ち上がり「いまの裁判官の質問では、被告人は二つの名前を使っていたのかとの質問だったと思うが、被告人はイイエと答えたのに対し通訳人はハイと通訳している」といいますとS裁判官は高圧的に「弁護人座ってください。」と言ってきました。
この裁判官、他の事件でのこと検察官の発言に私が座ったままちょっと反論したところ「弁護人!立って話してください!」と言った様にかなり権威主義的なところが感じられる裁判官です。
それはともかく、この裁判では私が被告人に質問し、被告人も日本語で話したことから、通訳人の仕事量は相当少ないようでした。(因みに通訳人の費用30分以内8千円、以後10分毎に千円、遠距離移動交通費と別に4千円の日当が支給される。昔は月に100万円以上稼ぐ通訳人もいた。)
通常の通訳事件ですと、同じことを日本語とタガログ語で二回言いますし、特に通訳人がいい加減ですと時間は二倍以上かかってしまいます。それにも拘らず、今回の通訳事件を当初の予定時間としては30分でやろうというのです。
ですから、審理の内容も全く形式的なことになり、被告人が日本に滞在した期間の長短のみで論告と判決がなされるといっても過言ではありません。ですから私が、接見で調書になかったことを聞き、これを被告人質問と弁論要旨でやるだけでも時間が足りなくなります。
ともかく、被告人は私の弁論を聞いていて、特に2歳のときから12年間顔を見ていない娘のことに触れると、涙を流していました。
最後にS裁判官が被告人に対し「今、弁護人は『異国』と言う言葉を使いましたが、その意味が分かりますか。」等と嫌みなことを聞いていました。
私は思わず「裁判長!日本人だって冒頭陳述、素因変更、検察官面前調書、執行猶予などの日本語の意味分からない人が沢山いるぞ!」と怒鳴りたい衝動に駆られましたが、どこか外で仕返しをする機会もあろうからと、その場は「丸く治めました。」私も最近人間が丸くなったのでしょうかね。ヒヒヒ
posted by やすかね at 17:00| 千葉 | Comment(0) | 法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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