2006年09月18日

貸金業規正法改正の裏で

自由民主党の金融調査、法務部会などで作る合同会議は15日、貸金業に対する規制強化策を全会一致で了承した(朝日16日)と報道されています。

改正案の中の特例金利の上限は年28%から25,2%に引き下げ、特例金利を設ける期間も当初の5年から2年に大幅に短縮するということです、金融庁への世論の強い批判を踏まえ規制内容をより強化することで「決着」したと言うことですが、今回の「規制強化案」は規制とは全く相反するものです。

既にご承知でしょうが、現在貸金業規正法での上限金利(これを超える高利では『約束』しただけで刑事罰)は29,2%ですが、貸し金業界は、この29,2%と利息制限法の15%(100万円以上)、18%(10万円以上)との間の「グレーゾーン」で営業しているのです。

しかし、このグレーゾーンで受け取った利息は、利息制限法に違反しますので債務者が、違法な利息を支払った後で「返してくれ」と訴訟をしますと返さざるをえない状況です。

若干おさらいをしますと、サラ金業界は、自民党などに政治献金を行い、出資法の上限金利が73%から40,002%に引き下げられる際「みなし弁済規定」を忍び込ませ、しばらくの間はこの規定を「活用」して日栄とか商工ファンドなどがあこぎな取立てを行い、多数の犠牲者を出し大きな社会問題となりました。

そこで、世論の力を背景に、上限金利が29,2%に引き差げられ、金貸と消費者側の弁護士などとの戦いの場は「みなし弁済規定」の違法性と適用の可否となりました。

04年2月20日最高裁判所は、このみなし弁済規定を事実上「無効」とする「最高裁当ったり前の判決」(喜怒哀楽44ページ)をだし、この戦いは消費者側の完全勝利となったのです。

その後、最高裁の示した基準に従って、弁護士などから貸金業者に対する取引経過の開示義務(払いすぎの利息を取り戻す有力手段)が広く認められ、貸金業者がこれに違反した場合、金融庁の厳しい行政指導が行われ、貸金業界は現在の法制の下では法的に利息制限法を越える金利を適法に受け取ることができなくなり、完全なお手上げ状態となりました。

要するに、今の法律状態のまま出資金の上限金利29,2%で貸付をしていた場合、数年後に債務者の依頼した司法書士、弁護士などから「払いすぎた利息を返しておくれ」と言われると、弁護士などの言うままに返還を余儀なくされているのです。

即ち、貸金業者は、利息制限法に違反する利息を何時「返しておくれ」と言われるか分からない状況での営業となりますから、常に「びくびく」しながら利息制限法に違反する高い利息を受け取っている状況です。

弁護士会などの失敗は、この状態でさらに29,2%のグレーゾーン金利の撤廃をしろ、利息制限法に一本化しろ、利息制限法の金利も引き下げろ、とやったことでしょうね。

何でもそうでしょうが、自分の主張を前面に出し、相手の立場を一切考慮しないで完全に攻めきろうとしたときの危険性を弁護士会などが考慮しなかった結果が、今回の自民党案に集積されたと考えます。

どういうことかと言いますと、今社会に存在している貸金業を全て無くそうとしても不可能なのですが、恰も大手業者を含め、存立のできないような法制度を作ろうと考え、利息制限法に一本化して「それ以上の金利をとった場合刑事罰を加えろ」とは言ってはいないでしょうが、同じようなことを言いますと、貸金業界も必死になります。

例えば、業者が従業員を一人採用しますと、少なくとも年間1000万円の収益を利息として上げる必要がでるでしょう。年間利息20%としても従業員一人当たり5000万円の貸付残高となります。従業員一人について5000万円、1000人で500億円の貸付を行い、ここから、店舗の維持、債務者(一人50万円としても100人の債務者)の管理、借入資金の利息支払い、その他経費を考えますとかなりの合理化をしても経営は大変でしょう。既に多くの消費者金融業者が倒産し、また外国資本などに買収されています。

わが国の貸金業界をこのような『逼迫』状態に置くとすれば、数千年の人間社会のなかで存在している「金貸」は適法に存在できず、全て違法状態の極めて不健全社会となってしまい、21世紀の法治国家としては見過ごすことはできないでしょう。

弁護士会などが「あと一歩、金貸しを追い詰めろ」と考え、業者の存立を認めないような要求を出したことに対し、貸金業界も必死に応戦したことでしょう。現実を見ないで相手方を追い詰めようとしても逆効果です。

長くなりますので、まとめますと要するに、今回の改正案では、大きく報道されていませんが、実は利息制限法の「改正」に非常に大きな問題があります。かつて悪名をはせた商工ローンなどは、現在利息制限法に違反する高利はあとで弁護士が入ると厄介だからと考え、500万円までの貸付を15%で行っているのです。小口貸付と比べ経費が少なくてすみますから、現在の利息制限法の下で十分営業ができているのです。

ところが、弁護士会などの「過大要求」を逆手にとり、500万円までは18%の利息に利息制限法を変えようとしています。その結果現在3400億円の貸付残高を有するSFCG(元の商工ファンド)は一挙に100億円以上の収益を上げることができるのです。(その他、10万円以上は18%しか取れなかったものが50万年に引き上げられ、その結果50万円までは20%の利息を取れるようになりますが、これは貸し金業者には全く関係なく、素人が友達に貸すとき取れる、と言うことです。この点は実はどうでもいい改正で、狙いは商工ローン業者が18%で貸せる範囲を引き上げたことです。)

消費者金融ではなく、いわゆる商工ローンは中小企業の貸付ですが、18%の高利が保障されますと、今後銀行などが商工ローンと提携を進めて中小企業から「貸し剥がし」をするようになるかもしれません。そうなると、わが国から自己資金の少ない中小企業は完全に「淘汰」されてしまいそうです。

もちろん消費者金融業者からの払い過ぎの利息の返還を求めることはできなくなります。最高裁の当ったり前の判決も今回の改正で無きものとされてしまうのです。

posted by やすかね at 08:07| 千葉 ☔| 議会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする