5月2日の産経には「国語力10年前に比べ低下」また7月16日朝日には「世界一短い中2の宿題時間」としてそれぞれデータが掲載されていました。
「全国都道府県教育長協議会」の調査では、各都道府県で国語力向上のために取り組みをしている小中高校各5校ずつ抽出して調べたところ、10年前に比べ国語力が低下したと考えている学校が小学校で6割、中学校で7割、高校生で9割であり、その理由は読書量の低下、コミュニケーション手段の変化、国語の授業が減ったからと考えられ、具体的にどんな力が低下したかについては「語彙力」が突出し、次いで「自分の考えをまとめて書く」力を上げています。
次は国際教育到達度評価学会(本部・オランダ)が03年46カ国22万5千人の中学2年生を調べたところ、家で宿題をする時間は日本が世界一短く、たった1時間という事です。家の手伝いも36分で下から2番目、それでは何をしているかといえばダントツの世界一であるのが2時間42分テレビを見ているということです。
人間、基本的に生きてゆくために仕事(自然に働きかけて食料を獲得し、飢餓に備えて蓄え)をし、その様な中で頭を使い、人間の知能を発達させてきたと思います。様々な技術・文化も仕事をする中で進歩していると思います。この人間の知能・文化発展にも言葉が不可欠ですし、日本人であれば、当然日本語で考え、漢字の読み書きをします。
中学生の頃は、柔軟な思考ができ、大人では困難な丸暗記でもますが、この時期に宿題もせず、テレビ漬けでは思考能力が劣ってくる事は明らかです。これもあれも皆「ゆとり教育」という名の放し飼いの結果と思います。
今日8月7日は、京都大学の西村和雄教授が「ゆとり教育が生み出す階級化社会」と題して「正論」を論じていました。
大学生の親の収入の一番は東大といわれて久しい(前出132ページ)のですが、このことは要するに親が自分の子供にどれほどの教育を施せるか、その結果が子供の学歴に現れているということです。小さいときからしっかりとしたレールに乗せる事ができればその後は、すいすいと進学し、大学を卒業後は中央の公務員の仲間入り(昔で言えば武士社会)ができ、将来安泰という事です。
論旨は、「格差社会」という言葉が流行しているが、差を生み出す個々の問題の本質を曖昧にしてしまう危険がある、たとえば大量のフリーター、ニートは学力も技術も身につけず卒業した人々であり、しいて言えば「ゆとり教育」の犠牲者であると、断じています。
また、非常に面白いと感じたのは、教授の調査によると大学卒業生の所得差を比べると、共通一次前に入学した卒業後の平均年収は親の学力が影響していたが、その後は平均年収に影響していたのは科目選択であり、数学を選択した人は社会を選択した人よりも年100万円以上高かったそうです。
これから、「教育が所得格差を生む」と結論付けています。そんなこと分かりきっているようでもあります(私見)が、子供の学力不足を指摘される前は「勉強なんてできなくたっていいの、自分が本当にやりたいことを見つけるのが大切だから」という言葉をうのみにした子供は、未だに本当にやりたい仕事を見つけられないでいる可能性がある。
ゆとり教育の下で、より高い所得の家庭は塾に通わせ、十分な教育ができるが、所得の低い家庭の子供は十分な教育を受けられないなら、社会の格差はますます拡大し階層は固定して「階級化社会」になるということです。
喜怒哀楽でまたブログでも書いていますが、要するに今の日本は既に「世襲制社会」となり、社会のトップの人々は政治家・芸術家・医者・弁護士などスポーツ選手だってその多くの親は「お金持ち」となっています。
人間の能力が最大限発揮されるには全ての人に可能性がなければならないと考えますが、子供の教育は親の資力が大きく影響することはこれまでにも明らかな事ですが、これに加え、さらにゆとり教育を進めることによって、さらに社会が階級化してしまうということのようです。「公平な社会」なんてもともと存在しませんから、少なくとも「公正な社会」を目指しましょう。
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