09年2月20日「鈴木宗男逮捕の真相」を書きましたが、6月18日号の東洋経済(6331号)に佐藤優氏が北方領土について若干のコメントがありましたので、これを踏まえ、鈴木宗男と北方領土に関連し「国家戦略を省みない外務省」と題し、書いてみます。
国際法云々を言うまでもなく、主権国家というのは、一定の領土とこの上に生活する人民(外国人も含む)に対し、政治権力を行使し、人民の生命財産を守ることができることとなっています。
満州事変に始まる、関東軍の大きな過ちとこれを助長するため、国民を煽動した朝日・毎日の新聞報道からわが国が「焦土」となった(これについては、後日書きます)敗戦でわが国は、アメリカ軍を主軸とする占領軍の支配下になりました。@当然わが国は、わが国の領土と国民に対する施政権を行使できなくなりました。
その後、わが国はサンフランシスコ平和条約によって「独立」したのですが、A沖縄、奄美、小笠原などはアメリカの施政権下に置かれ、わが国の実効支配は及びませんでした。
即ち、わが国の「固有の領土」に対して国家権力を及ぼすことが出来ない状態が続きました。国家主権と領土に対する実効支配が「分裂」していたのです。現在わが国が「実効支配」が出来ていない領土して北方領土のほか竹島(韓国の実効支配)があります。
上の@、Aと続くサンフランシスコ平和条約から沖縄の施政権返還の流れを理解することが北方領土問題を解決する糸口になるようです。
即ちBその後、独立したわが国は、固有の領土である沖縄などを実効支配できませんでしたが、アメリカと長い時間をかけて交渉した結果、沖縄、奄美、小笠原の施政権返還が実現したのです。この先例を応用して北方領土を考えましょうということです。
ところで、現在ロシアのメドベージェフ大統領は、「北方領土はロシアの領土」であると主張してつい最近、ロシアの大統領として始めて北方領土を訪問しています。これに対して菅総理は「暴挙だ」などと発言してロシアとの関係を悪化させました。
即ち、今のところロシアは、北方領土に関して全く日本と正反対、交渉の余地のない主張をしています。この状態で北方領土の返還は交渉では絶対無理ですから、これを返還させようとすれば、これは実力(戦争)で「解決」するしかないこととなります。
かつてアメリカのテキサス州はメキシコの領土でしたが、戦争で勝ったアメリカが自分の領土に組み入れたと思います。これをメキシコが今になって「奪回」するには戦争しかないでしょう。
結局、国際的に交渉ごとで解決できないことは、武力しかありません。物騒な話ですが、これが国際政治の現実です。パワーイズライトを示したのが、ビンラディンの殺害です。アメリカは主権国家のパキスタンに何らの許可を求めることもなく、軍事行動を起こしています。他人の家に自分の敵がいるからといって、他人の家に土足で入って言って敵をボコボコにできないのは常識ですが、国際法では力さえあれば「正当」なのです。少なくともアメリカは他国から制裁を受けません。他国は武力ではかなわないからです。
ところで、1956年の日ソ共同宣言で「平和条約締結後、歯舞と色丹の二島返還を約束しています。」つまり、ソ連その後のロシアは、日本に対し平和条約を締結すれば二島の返還を約束している以上、ロシアも少なくとも二島は日本の固有の領土であることを共同宣言で認め、平和条約締結までは、沖縄についてアメリカが実効支配していたと同じ状況であることを認めているのです。
共同宣言は国家間の約束ですから、わが国はロシアに対して平和条約を締結できれば、ロシアに対して約束をまもれ、と国際法で認められている正しい方法で歯舞・色丹の返還を求めることが出来ます。これを実現してからさらにロシアと国後・択捉の領有権について交渉するという二段階の方法がロシアを交渉に引きずり出すには有効な方法でしょう。
このような方法が、今のところロシアと「平和裏」に交渉できる唯一の方法でしかないと考えます。この段階的返還論を鈴木宗男が強力に主張していたようです。
これに対して鈴木宗男に反発(感情的に)していた外務省幹部は、小泉首相が田中真紀子を外相に任命した直後から、国民の大多数が「北方領土はすべてわが国の固有の領土である。」と考えているところを利用し「田中先生、鈴木らは国民が固有の領土と考えている北方4島を2島返還で妥協しようとしています。」と唆したんでしょうね。田中真紀子は9・11事件のときアメリカに「電灯付きヘルメットを送ろう。」などと誠に見事な外交音痴をさらけ出したような人物です。
それに加え、外務省は鈴木宗男に対する機密情報を共産党に流出させ、禁じ手を使い宗男バッシングの先頭に立たせました。その結果、鈴木宗男は国策捜査で逮捕され、現在刑務所に収監され、内部で「介護」の仕事をしているようです。介護といえば、自由のきかない他人のウンコの処理をしたり、飯を食わせたり、洗濯をしたりということですかね。国家的に有用な人材を、介護が必要となっている受刑者(正真正銘の犯罪者)の世話をさせているのです。
皆さん、現在の北方領土をめぐる情勢はどうでしょうか、共同宣言以後ロシアは今までにないほど強硬になり、北方領土返還交渉などに入る余地は全くありません。ロシアは北方領土(クリル諸島)を「固有の領土である」と強く主張して大統領まで訪問している状態ですから。
もしもですよ、外務省幹部が鈴木宗男の主張に対して「感情」でなく国家利益を優先して対応しておれば、北方領土問題は相当進展したと思います。この20年北方領土をめぐる全く外交関係は後退しています。外務省は全く仕事をしていない、というよりこれまでの交渉ライン・防御線を後退させているのです。
しかし09年に書いたようにその背後にいるアメリカの思惑がどうなるかですが、ここはわが国が国際的に独立国家である以上、すべての国と平和的に交渉することが必要です。何時までもアメリカの手下でいるならば何時まで立っても世界は日本を一人前と認めないでしょうね。
賢明な皆さんは、優秀な国家公務員が感情で国家利益を失うなんてことはない、とお考えでしょうが、これまでにもわが国では国家戦略を忘れ、国を滅ぼしたこともあるのです。
関東軍の考えた「焦土作戦」を後押しというか率先して戦争に突き進ませた朝日・毎日新聞とかがそうであるし、政治・マスコミ・学会という「原子力村」に潤沢な資金(電気料金は電力会社の見積もった高い料金に設定されている)を提供して国民に真実を隠して、わが国を未曾有の大被害を与えた原発事故など国の重大な利益を害する連中は何時の時代にもいるのです。話は飛びますが、経済産業省・厚生省とか官僚は、省益とか既得権益を守り、マスコミは「売らんがため」国家利益に損害を与えています。
満州事変から第二次世界大戦に突き進んだのは、陸軍が「売ろうかな」の新聞社に「不買運動」を仕掛けた結果であるし、原発事故を起こした東電も広告料で政治家・マスコミ・学会を「支配」していたのです。新聞の独立なんて存在しません。これからは、マスコミでなく、インターネットで真実を知らせることが重要ですね。
2011年06月20日
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