(千葉県弁護士会の機関紙「槇」へ投稿したものです。先日掲載されましたので、このホームページに掲載します。)
大分エラソーで少々刺激的な話をします。社会的正義を追及する弁護士たるもの経済活動だけしていては当然失格ですが、その行動の自由は一般の職業と比較しても相当大きくなっています。修習生時代に「自由研究日」という素敵な制度を知って、また先輩弁護士から弁護士は法律で禁止されていなければ何をしても良いと言われ、ほぼ毎日好き勝手に生きている状況です。
千葉県弁護士の仲間で組織している「千葉県弁護士会ゴルフ新撰組」はこれまでも鹿児島、山口、群馬県との対抗戦に転戦し今のところ、見事に全て敗退し、また埼玉、静岡との三会対抗戦にも主力として参戦して他会との親睦を深めている貴重な親睦団体です。
最近ゴルフをしている弁護士が減少しているか否か、また「無理して他の弁護士と一緒にゴルフをする必要も無い」と考えている人が多いのかわかりませんが、弁護士も国家の中で活動し、また地域のなかで様々な職業の人々と交流する中で自らを鍛え社会のお役に立つべきと考えるのですが、実にたいした事でもないことに時間を掛け議論しながら、結局つまらない結論に達していることがあります。
先日会内の弁護士にゴルフ新撰組を知らしめ、会員の増加を図ろうと考え、その案内をファクスで送ろうとの結論に達したときのことです。『それ、弁護士会でできなくなったよ。』と言うことです。『えっつ?どうして?』と聞いたところ、最近常議委員会でファクス送信の制限が決まったとのことです。
そこには、弁護士会は法曹の一翼を担う純然たる職能集団であり、親睦とか懇親とかは別の問題である、と考えているのではないかと思います。果たしてそうなのでしょうか、弁護士会は全人格的に結びついた職能集団である、とまでは言いませんが、個人と国家の関係のように単なる抽象的規範で結ばれた全体社会ではなく、構成員相互が互いに具体的関係を共有する強固な部分社会であると考えます。
資格があっても弁護士会に入会しなければ弁護士としての仕事もできず、仕事上の力量も、また弁護士としての品位を損なえば懲戒処分を受けることもあるのです。この様な性質を持つ団体であれば、純然たる職業集団であるなどとは到底言えなくなります。仲間内で仲間の品位を審査できる強制団体であると言う事はある意味で「全人格的に結合した村社会」であると言うことではないでしょうか。
今「社会」と言いましたが、実はこの社会と言う言葉はわかったようでよく判らない言葉です。この点は最近読んだ「法と掟」(宮崎学)で解説していますが、宮崎は社会でなく「仲間」と置き換えています。
仲間であるから助けるし、仲間であるから悪いことをすれば処分できる、それだからこそ弁護士会は「自律」している社会と言えると思います。結局弁護士会の役割は単なる「業務関係共同体」ではなく、「掟」のある自律社会なのです。そうであれば、下らないファクス送付制限などに振り回される必要も無かったであろうし、アホな提案も一蹴できたと思います。
しかし、ファクス問題がまったく議論の必要も無いかと言えばそれは違います。皆さん何時もお困りでしょうが、関係のない多量のファックスが勝手に送られてくるときです。また関係は大いにあるが(効果と費用を考えると)全く不要な日弁連の関連文書などもあります。これも、人的物的資源の無駄遣いです。
私も何度かファックスの件で相手方に文句をつけたことがあります。最高に馬鹿馬鹿しいのが、物損事故の加害者の代理人からのものでした。当方から丁寧に内配で催告をしたところ、一面識もない東京の「アホ」弁護士からファックスで「ご請求には応じられません」と木で鼻をくくるように回答してきたときです。
ファックスは、当方の購入したプリンタとコピー用紙を使用し、当方の負担するパフォーマンス料金で相手方の言い分を受け取ることですが、問題はこのような何ら信頼関係のない弁護士からくるファックスが何を意味しているか全くわきまえていないことです。金の問題でなく「質」の問題なのです。
また、あるときは県内の若手弁護士が、商工ローン関係で勝訴の判決を受けたらしく、何の前触れもなく、30ページくらいのファクスをしかも事務局の手違いで二回も送られてきたときです。関心が無いにもかかわらず、二回延々とファックスが流れ、その間当方のファクスは送信できず、相手方の配慮の無さにあきれてしまいました。
東京の弁護士には「お前、切手も貼らないで相手方弁護士に手紙を出すのか!」と怒鳴りつけ、2回もファックスをくれた事務局には「事前に電話を入れろ。」と言いました。また都内の某出版社から勝手にファクスを送ってきたときは「100円送れ!」とファクスしましたところ、100円の切手を送ってきました。
この様に、かなり激しい私でも、千葉県弁護士会のファクスには「改良すべき点はある」と考えても「これを禁止すべきである」と言ったことはありません。それは、弁護士会は弁護士会のルールがあるし、千葉県の弁護士仲間では一定の親睦も必要と考えるからです。
結局、ファクスが使用され始めて長い時間が経過したというものでもなく、未だファクスのない弁護士事務所だって存在しているのですから、現段階で弁護会の事務局が各会員に送付するファクスの範囲を予めルール化して一律に適用すべきと考えること自体無理でしょうし、具体的事実関係の積み重ねで一定のルールが自然に規範化されると考えます。その結果あるときは不合理なときもあるでしょうが、それは具体的事実であれば仕方の無いことと考えるほうが「合理的」であろうと思います。
人間である以上一定の「恣意的」運用がありえますが、なんでもファクスしておけ、などと考える人も減りつつあると思います。特に僕にガンガン言われたアホどもは今後十分注意するでしょうし、お知り合いに私の悪口を言えば、これを聴いた人もファクスの利用に注意するでしょうから、伝播姓の理論からも一定の教育効果も生じているはずです。要するにファクス運用については、その利用と誤用の積み重ねで適切な方向に進んでゆくと考えますので、あまり規則で縛らない方がよいと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、わざわざ弁護士会の機関誌に投稿して過激なことを言うのが目的ではなく、会員の皆様にゴルフ新撰組に是非参加をしてくださいと呼びかけるものです。「お前が言うと逆効果だ」といわれそうですが、新撰組でゴルフをしている仲間は誰しも、人と違うことを言うから自分の存在する価値があると考えていると思います。
国家と自らの存在、その中間に弁護士会という仲間の集団で生きてこそ自分の足跡を残せると、大きなことを言っておきます。何はともあれ、ゴルフは自ら審判となり、自らの精神力を鍛錬することで上達するものと思います。また新撰組は「村社会の掟」を通して人間的信頼関係を築きながら弁護士としての力量を深める結果となると思います。
ここまでエラソーな事を言って、始めて自分のゴルフが何故上達しないかその原因がわかりました。要するに精神力の鍛錬が足りないから、一打に集中できずガタガタとくずれてしまうのです。そう言うわけですので、皆さん是非新撰組に参加して一緒に研鑽をしましょう。遠征先での他会との交流会は実に楽しいものですし、間もなく千葉・静岡・埼玉との三会対抗戦が袖ヶ浦で行われます。前夜祭も楽しいですよ。
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