2010年02月21日

裁判員裁判で検察官の役割を考える

先日「最後は結果が大事さ!裁判員制度の無駄」と書きました。この裁判では被告人の違法行為(結果と行為の違法性)が、窃盗未遂(実害なし)と被害者に発生した結果(仮に被告人の行為が危険な行為ではあるとしても)は、4日間の傷害に過ぎませんでした。

それにもかかわらず、この事件に対し50名を越える裁判員候補者に対する呼び出しと説明、さらには裁判員の辞退者に対して、一人一人裁判官・検察官・弁護人らが面接をして6名の裁判員(2名の補充)を選任したほか、公判に先立つ半年間に及ぶ公判整理手続きと4日間の集中審理(裁判官3名裁判員補充を含め8名検察官4名弁護人2名その他警察・拘置所職員・裁判所職員など)評議と判決期日がありました。
そして最後に懲役4年半の実刑(受刑者一人に対し一年間に必要となる税金は千万円を超えるであろう)が言い渡されました。

しかし、結果(実害はたった、4日間の傷害だけ)を見れば実につまらない事件にこれほどの手間ひまをかけてやるべき事件であったであろうか、と大いに疑問を感ずる裁判員裁判でした。そこで、いろいろ考えますと、根本的にもっと検察官の職務の重要性に目を向ける必要があるということです。今日はこれを検討してみます。

まず、裁判員裁判制度は、国民の目線での刑事裁判の実現でしょうが、もっと遡りますと、刑事司法の問題は、社会としてどの程度の違法行為を刑法違反として刑罰を加えてでも抑圧し、国民の安全・安心とのバランスを取るかと言うことです。

そして刑事司法と基本的人権のバランスを考えるときは、犯人は絶対処罰しようと考える「犯人必罰思想」と、冤罪は許さないと考える「人権保障の思想」の「対決」があります。

どういうことかと言いますと犯人必罰思想では、人間のすることは過ちがつきものですから、いくら証拠を集めても最後はどうしても真実がわからないときがあります。しかし、この考え方は社会の治安を大事にしますから、多少怪しいなら処罰しておこうと考えがちです。
結局警察国家となり、個人の基本的人権が国家権力によって侵害される冤罪が多くなります。

これに対して、人権保障を重要と考えますと論理的に「疑わしくは被告人の権利」と考えますから、被告人はどうも怪しいが証拠が不十分であるから釈放しようとなり、結局真犯人でも証拠不十分で社会の中で、すなわち私たちの隣で犯罪者である真犯人が生活することになりますから、治安は悪くなり、国民の一人一人が自分の安全を自分で守らなければならないことになります。

ですから、「疑わしきは被告人の利益に」と奇麗事を言うことは、社会が危険なものとなりますが、この社会の方が、警察国家より自由が保障される「良い社会」であり、基本的人権が保障される、と考え、これが現代の「自由社会」なのです。
すなわち現在の社会は、この人権保障の社会ですから、犯罪者と隣りあわせで生活することが「当たり前」の社会です。極論すれば自分の安全は自分で守る必要があります。

裁判員裁判は、現在の後者の考え方の社会の中で、検察官が刑罰を加えてでも処罰すべきであると考え、起訴された被告人が有罪であるか無罪であるかの判断を職業的裁判官でなく、「同胞」の判断に委ねる制度と言うことです。

しかし、もう少し社会のことを(深く)考えますと、社会(国家)の構成員の負担する「税金」によって社会全体が維持運営され、そのなかで基本的人権と社会の治安のバランスを考えますから、本来であれば税金の無駄のない社会が最初に存在し、そのなかでさらに刑事司法制度を考える必要があると思います。

この様に考えてきますと、裁判員裁判を考える際に忘れてはならないことが今まで以上に検察官の仕事の重要性を考えなければならないということです。要するに検察官はいかにして税金を節約しつつ、社会の治安を考えるかということが、裁判員制度のなかったときに比べ、格段に重要となってきたといえます。分かりや易くいいますと、検察官は当該事件が果たして裁判員裁判対象事件と扱ってよいものか否か、今まで以上により慎重判断しなければならなくなります。

例えば、アメリカなどでは検察官も公選されますが、この選挙での選出をする理由とすれば、刑事司法の運営が警察・検察官・裁判官・弁護士・刑務所と、人間社会の必要悪の運営のために、計り知れない人間の労力(税金投入)が必要とされ、その出発点に検察官がその重要な役割を演じているから、検察官を国民の意思で選出しようと考えていると理解できるのです。

この様な視点で裁判員裁判制度を考えますと、このカネのかかる裁判員制度のレールにのせる検察官の職務もこれまで以上に慎重な判断が必要と思われます。本件は、窃盗未遂と傷害罪で起訴すれば、簡単に懲役2年程度で済み税金も裁判員の労力も、また裁判官も検察官もさらには弁護人も一人でしかも数ヶ月で事件が終了したでしょうに!!と強く感じました
posted by やすかね at 01:06| 千葉 ☀| Comment(0) | 法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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