もう少し丁寧に巣を作ればよいものをなんとも雑駁な巣なのです。しばらくすると卵を2個産み付けました。すきまだらけの巣ですから、これでよく卵が地面に落ちないものだと感心していますと、卵を温め始め、しばらくすると、2羽の雛がかえり、盛んに親鳩のくちばしから餌を貰いながら大きくなりました。
近くの植木の選定をするときも鳩の親子をびっくりさせないように、そっと剪定などしていました。
9月23日の朝のことです。しばらく巣を見なかったところ、産毛で覆われた雛だけが2羽ジッとして動きません。親鳩はどうしたのかな、「大丈夫かなぁー」と心配しても親鳩は戻ってきません。
午後に見ますと、まだ親鳩は戻りませんが、朝見たときより産毛が見えなくなり、茶色の羽が多くなったように感じました。
翌朝また巣を見ると、やっぱり雛だけが2羽ジッとしたままこちらを向いています。親は近くに見えません。
冬に雪の降った朝など、小鳥達は盛んに餌を探し始めます。小鳥は餌がないとたちまち死んでしまうのです。鳥達は、人間のように食いだめをしては上手に飛ぶことが出来ませんので、いつもスリムでいなければなりません。ですから、一日餌を食べないとなると生死にかかわるはずなのです。
そんなことを考えていますと、雛が丸二日も餌を食べないと死んでしまうのではないか、と心配になり、パンにご飯、多少の野菜をすりつぶし、牛乳でといてこれを加熱して冷ました後、ストローで食べさせようとしたのですが、全く食欲はありません。
諦めの悪い私もとうとう、餌をやるのを放棄しました。日本野鳥の会にでも電話してみるかとも考えたのですが、まあ野生の鳥だから、親がどこかで事故にでもあって、それで雛も餌がなくて死んだら死んだで仕方ないか、と自分なりに理解して、その後どうなるかを観察しました。
するとどうでしょう。見る見るうちに雛の体の色が変わり、茶色の羽が段々たくましくなってきたのです。
そこで、考えた結論は次の通りです。
雛が巣立ちをする前に沢山の餌を貰い、栄養満点の雛になっている。きっと柔らかい肉で油が乗っているでしょうね。誰ですか、よだれを出している人は。それはともかく、雛は数日間の「断食」中に体中に蓄えた栄養分で巣立ちに必要な羽がそろってくるのでしょうね。体重が減少すると共に羽が強くなり、体重と羽のバランスが整ったとき、一挙に巣立ってゆくのでしょう。
そんなことを考えていたとき、今朝、この数日間全く聞こえなかった「ボー。ボー」という鳩の声が聞こえてきました。
私が至近距離(50センチ)で見ると雛は、相当立派になった羽をそろえ、二本足でしっかりと立ち上がっていました。明日には見えなくなるかも知れないなと思い、携帯のカメラで撮影しておくことにしました。撮影の際「バシャッ」と大きなシャッター音がしたのですが、多少びっくりとしながらも、こちらをジット見ていました。さあ、明日はどうなるかですね。
人間の親は、子どもを太らせたまま、大した体力も付けられないで「うちの子は自立できない。」などとぼやいていませんか。4,5日食事をさせないで、食べたかったら自分で働け、などと「自立」を促したら虐待となりますかね。
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