2009年03月31日

弁護士のスイッチ

昨日は,久々にというと「普段はなんだ?」と言われてしまいそうですが,社会派弁護士のスイッチが強力に「ON」となりました。

最近は,インターネットでスーパーに行くことなく,パソコンで買い物ができる「ネットスーパー」と言われる新しい商売があります。利用者にとっては便利でも実際の労働現場では劣悪な条件で働かされる「労働者」が多くなっています。

お客がパソコンで注文をしますと,ネットスーパーでは商品を揃え,これを宅配便で届けるという仕事です。実質的労働者の「宅配業者」は,最大手の大手スーパーの店舗に出入りして,そこから直接荷物をお客の自宅まで配送するのですが,そのときの契約関係は相当複雑になっています。

明治にできた民法では,他人の労力を利用する契約関係は,雇用・請負・委任の各契約で行ないます。請負は他人の労力で仕事の完成(契約関係は終了)を,委任は他人に事務処理をお願いする仕事です。ですから,民法では基本的に他人を必要とする仕事の現場で継続的に仕事をする場合は雇用契約となります。

しかし,雇用契約ですと雇われる人の契約上の地位が雇い主と対等平等ではありませんから,特別法で労働者の保護がなされています。逆に言うと雇い主から見れば,この労働者保護立法が邪魔になりますから,雇い主は何とかしてこの邪魔な法律を回避しようとの動機が働き,労働者に対し,毎日毎日「請負」の仕事をさせる,など言うことが常態となっています。

派遣法では,会社と会社との契約(対等平等)で労働者を派遣しますから,従来の雇い主は契約相手の会社に対して,「あの労働者を変更しろ」等という事は何らの問題もなく行なわれることになります。この様な労働法制があることによって末端の労働者の労働条件は劣悪になってきます。

今回のネットスーパーの仕事は,大手スーパーから仕事を請け負った元請から下請けさらに孫受けとなり,この孫受け会社と安い料金(出来高制で軽自動車を持ち込み3,000円から最大で一日15,000円)で契約した「宅配業者」という労働者は,下請け会社の「従業員」という事でスーパーに出入りして,孫受け会社の社員から仕事の指示を請け,荷物を運んでいました。

孫受け会社は,宅配業者に少しでも気に入らない点があると「契約解除」して違約金を100万円も請求できるとの契約書を取り付けて,有無を言わせず労働者を「奴隷」のように扱いながら,報酬は月末締めの翌々月末の支払となっています。例えば,一月分の支払は3月末の支払です。通常の労働者ですと翌月現金払いで,仮に仕事上の失敗があっても賃金との相殺は禁止されますが,この孫受け会社は2か月分の報酬を先の100万円と相殺し,まだ足りないなどと嘯(ウソブ)いていました。

この孫受け会社は,契約自由の原則とか,法律上の抜け穴をついての正に社会的弱者に対するイジメそのものです。支払を受けられない金額は70万円ほどですから,弁護士に依頼しても大多数の弁護士は依頼を受けないのです。実際「宅配業者」という労働者は労働基準監督署,県庁,市役所さらに,今はやりの「法テラス」の紹介で弁護士事務所を訪ねたのですが,どこでも相談には乗ってくれませんでした。

「弁護士の社会的責任」「社会的弱者の救済」などと口では言う弁護士が多いのですが,実際には,引き受けてくれる弁護士は多くありません。しかし,この話を聞いて憤りを感じない弁護士は,僕はバッチを外した方が良いと考えています。

今回は,民法の報償責任の理論(利益を受けるものはそのリスクも受けるのが正義だという考え)を強力に押し出し,70万円の支払を求め,元受だけでなく大手スーパー含め4社に対し「訴えるぞ」と交渉したところ,翌日目出度く解決となったようです。
posted by やすかね at 15:50| 千葉 ☁| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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