2005年11月02日

法務大臣の死刑執行拒否

小泉内閣の第三次組閣が発表され、弁護士出身の杉浦法務大臣が死刑執行命令書に「私はサインしない」と言い切り、波紋を広げています。強盗殺人で2人を殺せば死刑、これが死刑制度の大まかな基準です。

僕など単なる財産犯、収賄などでも多額になれば死刑判決をしても良いのではと極論を展開しています。それは、多くの自己破産事件などを扱っていますと、300万円ほどの借金の取立を苦にして自ら命を絶つ人がいるからです。

それに比べ、例えばそごうの水島とか、100億円もの多額の粉飾決算を指導した公認会計士、依頼者からの預かり金を1億円も着服した弁護士など、判っているのに個人的利益のため多額の金銭をチョロまかした悪党は、死刑相当と考えているのです。

しかし、杉浦法務大臣は、宗教的な個人的見解を明らかにして死刑制度を否定しました。この発言が大問題となるや、直ちに撤回しましたが、司法制度の根幹にかかわる大問題に対する見解を自分の立場も弁えず、発言して問題となるや撤回するなど法務大臣の器量はないですね。ことに今の世論を全く無視して重大な発言をする法律家を分からないまま法務大臣に選任した首相の責任も重大です。時代の流れを認識しないでいると、弁護士とか議員だけでなくどのような職業も勤まらなくなります。

こんな激しい事を言っていると「やすかねは、厳罰主義で凝り固まったアホ弁護士」などといわれかねないので、極めて最近の刑事法廷での温情あると考えている僕の弁論要旨(裁判の最後に弁護人が、行なう意見陳述)をご紹介します。

この犯人は駅のホームで寝込んでいる酔客から共同して財布をとる窃盗グループです。前刑から10年以上娑婆で「活躍していた」と思われる今47歳の被告人です。

私は執行猶予の判決を出しておいて、仮に被告人が、この次にも犯罪を行ない捕まれば、今回の刑と次の刑を合わせて服役せざるを得なくなり、相当長期間の実刑を覚悟しなければ再度窃盗(すり)ができないという心理的抑制を働かせ、被告人を娑婆で更生させようと考えるのですが、如何でしょうか?検察官の求刑は3年6月で、僕の予想は多分3年の実刑です。裁判官はこの被告人に執行猶予にはできないでしょう。勇気が必要ですから・・


第一、 犯罪事実については争わない。
第二、 情状
1、 犯行の動機
  冒頭陳述にあるとおり、被告人は定職に就かず短期宿泊施設を利用する
などして主に日雇い労働者、パチンコなどを行ないながら生活していたが、生活費などを得るため、犯行当日共犯者らと携帯電話などで示し合わせ本件犯行に及んだものである。
2、 犯行態様
  犯行態様は、被告人が実行犯として外の二人がいわゆる幕の役割を行い、被害者の懐中から財布をすり取ったもので、被告人は犯行直後被告人に近寄ってきた警察官を察知してホームから線路に飛び降り金網を越え、逃走した。この被告人犯行は、数人で共謀して無警戒となっている酔客を狙う悪質で常習性の高い犯行である。
3、 被害額
  幸い、本件犯行での被害額は小さいものの、認知されていない犯行を考
えると単純に本件犯行のみをもって、被害額の多寡を論ずるのは妥当でないかもしれない。
4、 反省
  被告人は、逮捕後から一貫して単独犯行を主張して共犯者の存在を強く
否定するなど、全く反省の態度を示す事がなかったが、公判直前になり、これまでの自分の生き方これからの人生を考え、残り少ないこれからの人生を真っ当に生きるべく真摯に反省すること考え初めた。
5、 更生の可能性
  被告人の前科前歴を見ると、昭和58年、幼稚園荒らし等の窃盗罪で有罪
判決を受けてから、63年酔客からの窃盗で有罪判決を受け、さらに平成2年本件同様津田沼駅での窃盗で2年4月の有罪判決をうけ、仮釈放後、被告人は日雇いなで生計を立ててきたと主張しているが、本件犯行などから疑わしい点も見受けられる。
しかし被告人はこの公判廷で真摯な反省を行い、過去の自らの生き方を悔い改め、今後は真っ当な生活を送ることを約束している。また、被告人は最初の判決から実刑の判決を受け社会内での更生の機会を与えられた事がなく、自らを規律して法を遵守する訓練を受けていたとは言えない状況もある。
さらに、今回の犯行で被告人が思い知らされ、明らかになったことは、僅かの額の窃盗でも3年以上の実刑を受けることの不利益である。
そこで、被告人に対し、この様につまらない犯行を行なう事の利益・不利益を勘案させ、自らの行動を律する方策をとることを敢えて試みる事も必要と考える。
その結果、仮に被告人が再度犯行に陥り、社会内での更生に失敗すれば、被告人の人生も、ハイそれまでーよ、ということになり、この世に生を受け、両親、兄弟の中で成長、苦労してきた事も全て水の泡となることは必定である。
このように考えてくれば、被告人は前刑の終了から既に10年以上経過し、法的には執行猶予の要件があるのであるから、被告人の人生の中でただ一回の更生の機会を与える事も全く無駄な事ではないと考える。
殊に被告人のような窃盗犯人を仮に施設に収容しても、出所後はこれまで同様の泥棒家業を行うことは経験上明らかであるから、被告人の犯行から真実社会を守ろうとすれば、被告人の残りの人生の殆どを刑務所で生活させるしかない事も明らかであるが、しかし、その様な扱いをすることもまた不可能である。
そうであれば、ここで被告人を数年の間刑務所に収容して税金を使うより、被告人に対し、最初で最後の社会内での更生の機会を与える事こそ刑事政策上最善の方法と考える。
6、 結論 以上述べたとおり、今回の犯行に限り、被告人に対し、執行猶予の判決を求める。
posted by やすかね at 09:43| 千葉 ☀| 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする