2022年03月28日

なぜ人間は戦うか


生命あるものは、全て偶然に生まれ必然的に死を迎えますが、戦争で無差別に殺されることは絶対に許されないことです。人類がこの地球上に生まれて以来、本当に数えきれない人々が理由もなく命を絶たれてきました。命ある生命体の中で人類だけが戦争を行い、必要もない殺し合いを続けてきました。

動物は食料獲得のため戦い、また繁殖期には、優秀な子孫を残すため争いますが、優劣が決まれば戦いは止めます。原始の頃、人間も隣の集団の食料倉庫を奪い取るため、また農地を奪うため戦いました。

国家ができてから戦争に負けた民族は、勝者の奴隷とされ、勝者は働かず、奴隷から搾取するだけでした。民主主義が発達したギリシャでも政治に参加できる市民は、人口の2割でした。8割の奴隷労働で2割の市民が生活し、働かないで議論をしていたようで、オリンピック精神と言われる「アマチュア・リズム」は、起源を辿れば、労働する卑しい人は競技に参加させない、意味だそうです。

わき道にそれましたが、どうして人間は殺し合うのでしょうか。戦争の歴史を振り返れば、国家の領土を拡大して豊かな生活を求める、これが最大の原因しょうが、資本主義が発達し、武器生産を行い巨万の富を得ようとして、紛争地帯に武器を売りつける「死の商人」、更に奴隷貿易が盛んになったころでは、白人がアフリカの黒人部族間に紛争を起こさせ、武器を売りつけるだけでなく、戦争勝者から負けた部族を奴隷として購入し、アメリカなどに輸出する「奴隷商人」もいました。

昔の戦争は、農地を奪うための「領土拡大戦争」でしたが、資本主義が発達し、不況の原因となる余剰生産物を売りさばくため、国家と独占資本が結びつき、「市場獲得戦争」(帝国主義戦争)を始めるようになりました。
第2次世界大戦後は、資本主義国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)と社会主義国のワルシャワ条約機構が東西バランスをとり、ヨーロッパでの大国同士での戦は無くなりました。

1989年ベルリンの壁崩壊で、東西冷戦構造が終息し、資本主義国は、社会主義国に負けないの福祉国家づくりをしてきましたが、社会主義国での国民福祉の実体が明らかとなり、西側諸国では資本の論理を前面にした経済政策をとり格差が広がる中で、旧東側から西側への「出稼ぎ」が盛んになりました。

資本主義で貧富の差が大きくなるも、「貧しくとも可能性のある自由な労働」を求める旧東側国民は、西側に流れ、かつての軍事同盟に制限されていた西側への経済交流が、冷戦終結で解放されたものと思われます。
父ブッシュ大統領とゴルバチョフ対談でブッシュが「NATOは1インチたりとも東に行かない。」と約束したと報道されていますが、旧東側諸国がNATO加盟するなかで、かつてソ連の弾薬庫であったウクライナまでがNATOの軍事同盟に加わることは、プーチンにとってゴルバチョフの愚行の結果であり絶対許せない事でしょう。ロシアは自国とNATO諸国との間に緩衝地帯を不可欠と考えているからです。

しかしながら、民意の核心ともいえる自由と経済的欲求を持つ国民を長期間政治的に抑えることが不可能であることは、世界史の中で証明されてきたのではないだろうか。

ウクライナ国民の民意(ロシアも同様か?)が旧東側諸国民の民意と同種のものとプーチンが感じていれば、長期間国家の最高権力者として君臨してきたプーチンの内外にわたる政権運営も異なったと考えられます。

ゼレンスキー大統領が支持率を上げるため、ドローンを飛ばしてプーチンに喧嘩を売ったことは、ウクライナに計り知れない損害を与えただけでなく、国民多数の犠牲だけでなく戦争難民を生みだした愚行は明らかでしょう。
国家の最高権力者は、国民の生命と財産を可能な限り守ることが求められ、自らの支持率を上げるためにドローンを飛ばし、その結果国民に多大な犠牲を与えたことは、国民の直接選挙で国の最高権力者を決める「民主主義」の危ういさを感じます。「無能な大将は、敵より怖い」を証明しているでしょう。

また、バイデンが拙速に口走ってしまったのですが、西側諸国が派兵しないと決めている中で、ウクライナに武器援助することは、18歳から60歳まで出国禁止されている男子に銃を手に取り、ロシア軍との戦を強要することとなり、自国の武器商人の意向に沿うことは別にして、更なる人的被害を拡大させるだけで、人道支援の真逆の支援と考えられます。

独立国が外交力を含めた独力で隣国との戦争に勝利できないなら、国民の生命保護を最優先にして、早々に降伏し大統領を辞任する他ないでしょう。他国の支援を充てにして国民が犬死することを容認する最高権力者は、正に敵より怖い存在です。
posted by やすかね at 09:45| 千葉 ☁| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月03日

世界秩序の『 正義』が変わる

ロシアのウクライナ侵攻は、国連総会での決議がされた様に全世界から非難を浴びています。
これに対し昨日、日本語堪能なロシア大使がテレビ出演し、キャスターに要旨『大量破壊兵器があるとしてイランを攻め滅ぼし、リビアのカダフィ大佐を殺したとき、日本のテレビがアメリカの大使を呼びつけたことがあるか。』と質問していました。キャスターは『だからアメリカは反省している。』逆に『ロシアは自分の思い通りにならなかったら、武力攻撃していいのか。』とロシア大使の発言を攻撃していました。

2001年9.11の貿易センタービルが破壊されて以来、アメリカは国際テロ組織撲滅を目指し、世界の憲兵として軍事力を行使してきました。実は、9.11事件勃発の前、プーチンはチェチェンに国際テロ組織がある、テロを防ぐため国際的連帯が必要だと、世界に向けて発信しました。

しかし、アメリカは「チェチェンはロシアの国内問題だ」とプーチンの提案を無視し、その後ニューヨークの貿易センタービルが破壊されました。プーチンの情報提供に対し、連帯してテロ組織の撲滅ができていれば、9・11は防げたかもしれません。

ベトナム戦争の是非を論ずるまでもなく、アメリカは、イランを滅ぼし、リビアに混乱を持ち込み、2014年カイザル大統領を擁立してアフガニスタンに傀儡政権を作り、その後ガーニ大統領に政権が移り、アメリカはこの政権を支援してきましたが、昨年アメリカはアフガニスタンから撤退し、今アフガニスタンではタリバン政権が、イスラムの教えに従ったという基本的人権無視の政策を実行しているようです。イスラム教は本来的に平和宗教ですから、残念です。

アメリカがアフガンから撤退し、世界の憲兵としてのアメリカが弱体化を示したものとなり、ロシアはその間隙を突いたと考えています。
ロシアとウクライナなどのミンスク議定書を巡りアメリカ・西欧とロシアは異なった見解を述べているようですが、ロシアの主張は国連で大差をつけられて否定されました。多数決原理で国際紛争の是非を決めるようになってきたことは、国際的民主主義の発展でしょうか。

ところで、第二次大戦以後の国際秩序の『正義』も間違いなく「武力」でした。パワーイズ・ライトに基づく秩序維持は日本の戦国時代を考えれば分かり易いところですが、有史以来人類の「正義」でした。

信長が、美濃が欲しいと考え美濃を占領すれば、信長に降伏しなかった美濃の齋藤義龍は殺され、殺した信長が正義を実現したことになっています。浅井長政も信長に殺されています。この戦国時代を纏めあげ、江戸幕府を開いた徳川家康とその後の幕府は、日本における憲兵として諸藩同士の戦を禁止し、徳川幕府は最強の武力を背景に260年間に及び日本の平和を維持してきました。この平和な江戸時代、日本の文化は大いに発展しました。人類の進歩に平和は、不可欠です。

話は飛びますが、今千葉市美術館で『世界を魅了した浮世絵』展が開催され、『ジャポニズム』が西洋画家に大きな影響を与えたことを紹介しています。1500円払って入館すればすぐわかりますが、浮世絵の構図が西洋美術に大きな影響を与えたことが容易に理解できます。『SIGNATURE』3月号で作家の伊集院静も「ゴッホは近代の人であるが、何かの派に所属していない。美術史家、研究者たちが、この画家を無所属の存在にしたのは、彼の作品の強烈な個性によるのだろう。彼が影響を受けた派、もしくはグループはないが、一つだけあるとすれば、それはジャポン、日本である。それも江戸時代の浮世絵に見る大胆な構図である。」と浮世絵の世界に与えた影響力を絶賛しています。
  
要するに、260年の徳川の平和は日本の学述・芸術に大きな発展を齎し、よくわかりませんが、伊藤若冲の鶏の画は、若冲自身「おれの絵は1000年後に理解される」と豪語していたようですが、若冲の鶏の画を拡大してゆくと、今のデジタルの世界で初めてわかるように1ミリ四方に数十の点が異なった色で描かれているようです。

平和は、世界に誇れる芸術を発展させていたのです。また、戦後の80年足らずの平和の間に、日本は食生活から漫画など世界に誇れる文化を発展させ、学術芸術を世界に発信しています。

この様に考えて来ますと、民主主義か独裁か、何れが優れているか、わかりませんが、最高権力者により社会秩序が維持されているとき、人間が本来持っている可能性が大きく発展することがわかります。

アメリカが世界の憲兵の役割を喪失し、ロシアがその間隙を乗って、武力で他国支配しようとすることは、SNSが発展し世界のできごとが瞬く間に地球を一周する時代では、国連総会決議に見られるように、もはや許されないことが明らかとなりました。これはプーチンの誤算だったと思います。

エドワード・ルトワックが『戦争にチャンスを与えよ』の中で「大国は小国に勝てない」と論破していました。大国と戦う弱小国に周りからの援助があるからだと説明しています。これまで、アメリカの横暴に黙っていた世界も、今回のロシアの横暴に対して世界中が非難する時代になったことは、世界の「戦国時代」が克服されつつあるように思います。

SNSを通じて、世界の正義感に大きな変化が起こっているようです。問題は、国連が江戸の平和を築いた徳川幕府になれるかということでしょうかね。

posted by やすかね at 12:27| 千葉 🌁| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする